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フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭管弦楽団
ベートーヴェン:交響曲第9番「合唱付き」

ディスク

Furtwangler
Beethoven:Symphony No.9 'Choral'
バイロイト祝祭管弦楽団
(MONO)
録音1951年7月、ライヴ録音
国内盤、EMI
SACDハイブリッド

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二つ折りのデジパック仕様。
左ページには当時のフルトヴェングラー、メニューインと家族の写真。

ブックレットには、小林利之氏のSACD化へのライナー。
金子建志氏の「演奏者と聴衆の祈りが完全に凝縮されたドキュメンタリー」と題されたライナー。
満津岡信育氏の曲解説。
アビイ・ロード・スタジオ・エンジニアのサイモン・ギブソンのSACD化を説明したライナー。

フルトヴェングラーのSACD
・新リマスター音源仕様
・EMIアビイロード・スタジオによる96kHz/24Bitデジタル・リマスター
・ノイズ・カットを最小限に抑え、録音会場での音響の再生をめざしたマスタリング
・EMI所有の正規録音をリマスター
・日本のみのSACDハイブリッド盤発売

 待望の、EMI録音によるフルトヴェングラーのSACDを聴いてみました。有名なバイロイトの〈第九〉です。
 今までのCDと聴き比べをしてレビューしたいと思います。CDは今回リマスターしたのと同じ、アビイ・ロード・スタジオによる「ARTマスタリング」のCDです。

SACDは音が引き締まり、明瞭な輪郭に

 SACDは、CDに比べて、音が引き締まっていると感じました。
 ARTのCDは、これはこれで伸びやかな音です。でも高音質化が、どの楽器も“同じ方向”へ向かっているようでした。
 それに比べると、SACDは、弦楽器、木管、金管、打楽器、“それぞれの音色に即した高音質化”で、楽器の質感があらわれた気がします。
 結果、SACDでは音が引き締まった感じがします。
 音に明瞭な輪郭がそなわり、いい意味でのメリハリがついた気がします。
 ティンパニの音は、強烈になりました。金管、木管も、弦楽器と分離して、それぞれの存在感を感じさせます。裸になる木管もツヤがあります。

第3楽章は音質的に最も気に入った楽章

 SACDの特質である、各楽器の〈空気感〉は、さすがに最新DSD録音ほど鮮明ではありませんが、それでも「おっ」と思う箇所が随所にあります。
 第3楽章のアダージョ、第4楽章のソリストの声では、空間がいい感じです。
 実際、第3楽章は音質的に最も気に入った楽章で、オーケストラは暖かく広がり、これはモノラルでも十分だと思いました。
 ヘッドフォンで聴いたらむずかしいかもしれませんが、スピーカー(B&W804)ですと、全体を通じて、音にザラつきも出ます。これもSACDならではだと思いました。

足音と、楽章間の音も収録

 SACDには、CDではカットされていた、フルトヴェングラーがカツカツと足音を響かせて、ステージに登場するところから収録されています。
 わき起こる拍手。続いて楽団員の足を鳴らす音。それがやむと、楽団員との小さな会話、演奏がはじまるのを待つ観客の気配……。
 正直、ここを聴いただけで、このディスクを買ってよかった。これが特別な演奏会でであると、強烈に思ってしまいました。
 楽章間の音をカットしていないのも、素晴らしいです。楽譜をペラリとめくったような小さな音に感激。演奏終了後も拍手が入っています。

観客の咳

 観客の咳ですが、CDではあった咳が、SACDではカットされているのが分かりました。音楽を覆い消してしまうくらいの咳はカットされているようです。
 なにものもカットしてほしくない心情もありますが、CDで聴いていると、咳のあるところだけ一瞬、気がそぎれますので、こういうカットはいいかな、とも思います。

音質を我慢する必要がなくなったフルトヴェングラー

 1970年代のステレオ録音全盛時には、「音質を我慢して、昔の指揮者をありがたがって聴いている」と揶揄されこともあるフルトヴェングラーの録音。
 SACDでは、音質を我慢する必要はなくなりました。
 フルトヴェングラーの録音はばらつきがあるので、全タイトルがこうであるとは書けませんが、少なくともバイロイトの「第九」では、ひきしまった、コクのある音。アナログらしいザラつきを、評価したいと思います。

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2011.1.21