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クラシック・スーパーオーディオCD(SACD)おすすめソフトレビュー

ブーレーズ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ラヴェル:ボレロ、《マ・メール・ロア》他

Hybrid Stereo/Multi-ch
録音1993年
輸入盤、ユニバーサル

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CDでは1枚物だが、SACDでは容量の関係だろう、同じ収録曲でも2枚組になる。しかし価格は、1枚物の値段なので安心されたし。
2枚組になったほうが、聴くのは楽だと思う。収録曲は下のとおり。

SACD1 約36分
・バレエ《マ・メール・ロア》
・海原の小舟

SACD2 約39分
・道化師の朝の歌
・スペイン狂詩曲
・ボレロ

ブーレーズとベルリン・フィルの、意外で嬉しい顔合わせ

 本作はドイツ・グラモフォンと契約したブーレーズが、なんとベルリン・フィルを指揮して、93年に録音した話題盤です。
 収録されているバレエ《マ・メール・ロア》、「海原の小舟」「道化師の朝の歌」などは、ピアノ曲から編曲された管弦楽曲です。同じフランス近代音楽でもドビュッシーとは違った、ラベルならではの親しみやすいオーケストラ作品です。
 それにしても色彩的なフランス音楽を「ベルリン・フィルで振るのか!?」と、リスナーには驚きと期待が走りますが、聴いてみると、ベルリン・フィルが、“小粋に”素晴らしく演奏してくれます。
 さすが世界一のオーケストラ。ブーレーズもそれがわかっていたんでしょうね。

聴き慣れた「ボレロ」に絶頂感を感じるマルチチャンネル

 本作は、ずっとCDで聴いてきた愛聴盤でした。93年録音だから、音響的にマルチチャンネルを作るのは、いたしかたないでしょう。
 なので「最新録音のマルチにくらべて、ワザとらしいかも…」と思っていたのです。しかしマルチチャンネルが良いのでした!
 それが特に感じられるのが《マ・メール・ロア》。リスナーに情景描写を思い起こさせるロマンチックな曲ですが、マルチチャンネルでは雰囲気が格段にアップします。曲が描くおとぎ話を、「読む」から「体験する」に近くなる。
 極め付けは「ボレロ」です。
 「ボレロ」ですか、はいはい、と誰もが聴く前から分かった気分になる曲ですが、マルチチャンネルでは「楽器の増加が、空間の拡張になる」という新鮮さ。
 加えて、ベルリン・フィルのソロ陣が、また味わいがあるのです。ひとりひとりの演奏が、まるで愛撫のようで、エロティシズムさえ感じてしまいました。
 このマルチチャンネルの「ボレロ」は、オルガスムスへ向かうよう。じわじわと上り詰める興奮度は、同じ録音でもステレオ再生とはまるで違います。
 この作品、SACDステレオは勿論だが、SACDマルチチャンネル化の恩恵が大きいと思う。ラベルの楽曲がさらに魅惑的に輝きます。

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2008.2.2

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