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ピエール・ブーレーズ指揮シカゴ交響楽団
ストラヴィンスキー:〈プルチネルラ〉全曲、3楽章の交響曲、他

ディスク
Stravinsky:Pulcinella
Pierre Boulez/
Chicago Symphony Orchestra

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録音2009年2月〜3月
ライヴ録音(Orchestra Hall at Symphony Center)
輸入盤、CSO-RESOUND

収録曲
1 3楽章の交響曲
2 オーケストラのための4つのエチュード
3 プルチネルラ
(トータル 71:12)

普通のプラケースにブックレット。

ブックレットには、2ページにわたりブーレーズのインタビュー(英仏独語)。収録された3曲について答えている。

〈プルチネルラ〉のイタリア語の歌詞と英訳。

ブーレーズと〈プルチネルラ〉を演奏する歌手、オケのカラー写真が2枚。
あと4人の歌手のプロフィールページとシカゴ交響楽団のメンバー表。

ピクチャー・ディスクはジャケットの絵を大きくあしらったもの。

ブーレーズのストラヴィンスキー、SACD時代の録音

 本作は現代音楽作曲家にして、現代音楽、特にストラヴィンスキーの指揮者として有名なピエール・ブーレーズのSACDです。
 ブーレーズのSACDは、CBSやDGのものがリリースされていますが、いずれも旧作のSACD化。
 ブーレーズがSACDとして録音したのは本作が初めてだと思います。それもシカゴ交響楽団とのストラヴィンスキー。さっそく聴いてみました。

名作〈プルチネルラ〉がブーレーズらしい演奏で

 バレエ曲〈プルチネルラ〉(1919)は、イタリアのバロック作曲家ベルコレージ等の引用がある曲で、バロックの典雅なメロディと、ストラヴィンスキーの野獣性が解けあった名作。〈春の祭典〉など三大バレエと肩を並べる作品でしょう。

 ブーレーズは80年代に、アンサンブル・アンテルコンタンポランと同曲を録音していますが、この2009年録音のほうが、全然いいと思いました。

 そもそも〈プルチネルラ〉は、アバド&ロンドン響盤で気に入ったのでした。
 そのアバド盤のワイルドさに比べて、80年代に出たブーレーズ盤は個人的には、整いすぎのため、生命力に劣る気がして、「あの〈春の祭典〉のブーレーズはどうしちゃったの?」と不満が残ったものです。

 しかしこのSACDの〈プルチネルラ〉は、80年代盤もアバド盤も凌駕していると思いました。
 一聴すると80年盤の傾向を押し進めた、整った感じなのですが、深みが違いました。
 僕が表面的なハデさを求めていた〈プルチネルラ〉に、まさかの内面性を引き出すアプローチ。それでいて、エンディングのリズムのキレもいい。
 ようやくブーレーズらしい〈プルチネルラ〉を、それもSACDで聴くことができて満足です。

〈3楽章の交響曲〉〈オーケストラのための4つのエチュード〉

 さらに、ストラヴィンスキーの新古典主義時代をあまり評価していなかったブーレーズが〈3楽章の交響曲〉(1945)を録音してくれたのもうれしいです。

 三大バレエの頃のストラヴィンスキーが蘇ったかのような第1楽章。ピアノとオーケストラのメチャ、カッコいいフレーズが飛び出して、ここだけでこの曲を認めてしまうのです(ブーレーズもブックレットのインタビューで、第1楽章と第3楽章が好きだと答えています)。

 〈オーケストラのための4つのエチュード〉(1928)は、〈春の祭典〉のあとに作曲された弦楽四重奏曲3曲(1914)と、自動ピアノのための曲(1917)を、オーケスレーションした4曲構成の小品。
 ブーレーズも「注目すべき時期の作品」(インタビュー)としているように、80年代盤につづいて、ここでも録音しています。

SACDの音

 マルチチャンネルで聴きました。
 ライヴ録音ですが、ホールの残響はほとんど感じないサラウンド。最初はライヴ録音とは思いませんでした。
 2chを拡大したようなフロントの音なのですが、広がり感があるのは、無色透明なサラウンド音が広がっているからでしょう。

 音質は最初、どこか、つや消しの印象だったのですが、〈プルチネルラ〉で声楽を聴けば、「やっぱり、みずみずしい音だなあ」と改めることになります。
 あと金管のフォルテでも、みずみずしさを感じました。つや消しのなかに、みずみずさの混じった音と感じました。

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ブーレーズのストラヴィンスキーSACD
ストラヴィンスキー:春の祭典/ブーレーズ
同曲の革新的録音。分析的演奏はすごくエモーショナル
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2012.5.16