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アルトゥール・ピザーロ(ピアノ)サー・チャールズ・マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、第4番、第5番〈皇帝〉

ディスク
Loodwig Van Beethoven
Piano Concert 3, 4 & 5

Artur Pizarro (piano)
Sir Charles Mackerras (Cond.)
Scottish Chamber Orchestra

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録音 2008年11月
輸入盤 LINN RECORDS

SACD 1(67'34")
ピアノ協奏曲第3番
ピアノ協奏曲第4番

SACD 2  (35'48")
ピアノ協奏曲第5番〈皇帝〉

ブックレットには英語の解説と演奏者の写真。


とろけるサラウンド、とろけるベートーヴェン

 本作はサー・チャールズ・マッケラス指揮スコットランド室内管弦楽団、ピアノはアルトゥール・ピザーロによる、ベートーヴェンのSACDです。高音質で有名なLINN RECORDSからのリリース。

 このところハイレゾ配信のクラシックを聴くことも多いのですが、それらは2chがメイン。
 そんななか、このSACDのマルチチャンネルを聴いて「やっぱりサラウンドは2chとは別物」と思いました。2chが「暖かいお湯で顔を洗っている快感」としたら、サラウンドは「暖かい湯船に全身つかっている快感」です。

  具体的には、前方の音のふくよかさは言うまでもなく、左右と後方にただよう音の存在感がちがいます。2chではどうしてもこの部分が欠落して、スピーカーの音を聴いている感じが否めませんでした。それがサラウンドでは音楽が豊かに響きます。
 とくにこのSACDのサラウンドは、とろけるようなまろやかさでした。


パッケージはデジパックが3つ折になっている。ジャケットはドイツ・ロマン派の画家キャスパー・デイヴィッド・フリードリッヒのおなじみのもの。部屋に飾っておいてもいい。

美しいピアノの弾き手、アルトゥール・ピザーロ

 ですのでサラウンド空間で聴く、ベートーヴェンの音楽もとろけるように美しいです。
 アルトゥール・ピザーロのピアノは、一粒一粒の音がとても綺麗です。その美しさは、ちょうどマレイ・ペライアのピアノの音色を思わせるほどです。
 ピザーロの演奏で聴くと、男性的と思っていたベートーヴェンのピアノ協奏曲が、実は流れるような旋律ばかりであるのに、あらためて気づきました。

 一方、瞑想的な各協奏曲の第2楽章もしっとりとして、心に染み入ります。
 美しいピアノのバックで、マッケラスの指揮するスコットランド室内管弦楽団が、これまた美しいのだけれど男性的な音響を、ここぞというところで入れるので緊張感のある演奏になっています。

名曲〈皇帝〉も、このSACDならストレスなく聴ける

 たぶん聴き込んだクラシック・ファンは、名曲とされる〈皇帝〉よりも、第3番、第4番のほうへ好みがシフトしているかと思います。
 僕もそうで、〈皇帝〉はベートーヴェン特有の「うっとおしさ」にやや疲れるところがあったのですが、ピザーロとマッケラスの〈皇帝〉は、美しいピアノ音の乱舞、カデンツァに舌鼓うつことになりました。

 このSACDで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の3曲が「すべて心地よく聴ける」のがうれしくなりました。収録時間が短いのもいい。なんども聴きたくなるSACDです。

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2014.3.11