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SACD
アルヴァ・ノト+Nilo、クリスチャン・フェネス、フランチェスコ・トリスターノ、坂本龍一
グレン・グールド・ギャザリング

グレン・グールド・ギャザリング
Sony Music Japan International(SMJI) / SACDハイブリッド2枚組 / Stereo

Tower Records | Amazon

坂本龍一主宰、グールドに捧げたトリビュート・コンサートのライヴ録音

坂本龍一が主宰して2017年12月に行なわれたグレン・グールドへのトリビュート・コンサート。その草月ホールでのライブ録音がこの『グレン・グールド・ギャザリング(Glenn Gould Gathering)』である。SACDハイブリッド2枚組。発売は2018年9月。

演奏するのは、坂本龍一がこのコンサートのために声をかけた演奏家たちだ。ドイツの電子音楽アーティストのアルヴァ・ノト+Nilo。オーストリア出身で音響の世界を切り開くギタリスト、クリスチャン・フェネス。そしてルクセンブルクのピアニスト、フランチェスコ・トリスターノ。

ステージ中央に2台のピアノが向かい合うように置かれている。右のピアノとシンセサイザーが坂本龍一。左のピアノがフランチェスコ・トリスターノ。ステージ左手にクリスチャン・フェネスのギター。ステージ右手がアルヴァ・ノトとNiloである。

名エンジニア、オノ セイゲン氏のレコーディング

録音はこれまでも坂本龍一の作品に関わってきたオノ セイゲン氏だ。マイクはソニーのハイレゾマイクロフォン100シリーズが使われた。2台のピアノには各4本のマイクを設置(ピアノの鍵盤から見て左手側、右手側にそれぞれC-100をカーディオイドで使用。低音用にはECM-100U、ピアノのボトムには音響イコライザ―(試作品)を装着したECM-100N)。他にアンビエンスマイクにECM-100Nを4本、ECM-100Uを4本使用。他にライン入力。収録はTASCAM DA-3000 DSD recorder、SONY Sonoma DSD Workstation。

大きく言ってソロ・ピアノ演奏と、電子楽器を含んだユニットでの演奏で音像が違うようだ。DISC 1とDISC 2に収録されている坂本龍一とフランチェスコ・トリスターノのソロ・ピアノ演奏では、ピアノの音が左右のスピーカーに広がって収録されている。すぐ目の前にピアノがあるかのような音だ。

このピアノが厚みと温かみのある音。坂本龍一の演奏は最初、滴り落ちる水滴のような響きから始まるだけに、SACDの良さが十分に生きていると思われる。余談ながら、このアルバムの後で別のピアノのCDを聴いたのだが、最新録音にもかかわらずペラペラのピアノ音で、やはりSACD、そしてオノ セイゲン氏の録音はコクがあるとあらためて実感した次第。

話を戻す。

実際、このピアノ音は草月ホールのステージ上で収録されたことを忘れるほど腰の据わった音。これがスタジオ録音でなくライヴであると実感するのは、時折聞こえる観客の咳や、坂本龍一が楽譜の紙を取り替えているのだろうか、カサカサと紙のこすれる音がする時で、言ってみればどちらもノイズなのだが、ピントがドンピシャの解像度で収録されているところに妙にドキッとし、それでライヴなのだ、と確認するのである。草月ホールの観客が息を沈めてステージの演奏を聴いているのが伝わる。

以上がピアノ・ソロの演奏での音像だとしたら、それ以外の曲、エレクトリック・ギターや電子音などが加わるユニットでの演奏では、実際のライヴ空間のような音像となる。アンビエント音も含まれる音響。こちらはこちらで空気感が心地よい空間だ。

アンビエント風な音楽、叙情性のあるノイズ/電子音響、そしてクラシック風な音楽

坂本龍一のライナーノートによれば、ここで演奏される音楽はグレン・グールドの音楽を「リモデル/リワーク」した作品だという。グールドの演奏のアレンジとか、そういうことではなくて、各アーティストのグールドへの思いを込めた作品なのだろう。

DISC 1の坂本龍一のソロ・ピアノはバックに効果音や波の音がずっと流れ続けていて心象風景のような音楽。アンビエント・ミュージックのような、とうとうとしたピアノの調べが続くが、オリジナルの「andata」は坂本龍一らしい美しい曲だ。

クリスチャン・フェネスの「ア・グランドベル・トラジディ」。そのサウンドはエレクトリック・ギターで出しているとちょっと思えないような、一つの生命体のような音なのだが不思議と叙情性を感じる。坂本龍一の生ピアノとも溶け合っている。ここまではアンビエント・ミュージックとも言える音楽かと思う。

それに比べるとDISC 2のフランチェスコ・トリスターノのピアノ演奏は、普通のクラシック・ファンも気に入るかと思う。最初に聴いた時はバッハの「フランス組曲」あたりを再構築しているのかと思ったほどバロック風(バッハ風)だ。

しかしこれはトリスターノの自作「ギボンズ」という曲だ。現代の作曲家がバロック風にピアノ曲を作っても虚しいだけと思っていただけに、トリスターノの才能には面白いところがあると思った。途中グレン・グールド作曲の曲も弾くが、こちらは十二音技法(?)のいい響きである。

最後は全員でのパフォーマンスでトリスターノ作曲の「コーダ・フォー・グレン」。エレクトリックなリズムが根底を支えて、ギターのノイズ系の音が加わり、ピアノやシンセサイザーが音を刻む。これも“ワン・チーム”というか、全員で一つの曲にまとめ上げていて面白かった。

『グレン・グールド・ギャザリング』。多分、初めてこのSACDを聴くとピンとこない部分があるかもしれない。しかしSACDは何度でも繰り返して聴くことができる。(音質を味わいながら)何度も聴くと、ライヴでの演奏だけに“今ここで生まれる音楽”に立ち会う面白さがジワジワと感じられるかと思う。

2019年11月6日


ディスクは左側に差し込んで収める珍しいやり方。

収録曲

Disc 1

坂本龍一:
Improvisation_20171215
J.S.バッハ(坂本龍一編):「フーガの技法」 BWV1080a~コントラプンクトゥス I
J.S.バッハ(坂本龍一編):コラール「古き年は過ぎ去りぬ」 BWV614
坂本龍一:andata
J.S.バッハ(坂本龍一編):コラール前奏曲「主イエス・キリストよ、われ汝に呼ばわる」 BWV639

クリスチャン・フェネスfeat. 坂本龍一:
クリスチャン・フェネス:ア・グランドベル・トラジディ

アルヴァ・ノト + Nilo feat. 坂本龍一:
Bach Gould redux

Disc 2

フランチェスコ・トリスターノ:
ギボンズ:パヴァン
ギボンズ:フレンチ・エア
ギボンズ:アルマン
ギボンズ:イタリアン・グラウンド
ギボンズ:グラウンド

グレン・グールド:2つのピアノ小品
第1曲
第2曲

スウェーリンク:ファンタジア ニ調

アルヴァ・ノト + Nilo、クリスチャン・フェネス、フランチェスコ・トリスターノ、坂本龍一
フランチェスコ・トリスターノ:コーダ・フォー・グレン(世界初演)

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