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グレン・グールド
バッハ:ゴールドベルク変奏曲(1955年)の再創造
~Zenph Re-Performance

GOULD 1955 GOLDBERG VARIATIONS
ZANPH RE-PERFORMANCE

SMJI

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本ディスクには通常の録音の他に〈バイノーラル録音〉も収録されている。
〈バイノーラル録音〉とは、演奏者の頭(耳)のところあたりにマイクをセッティングして音を録るやり方。これは「ヘッドフォンで聴く」のに特化した音なのだそうだ。実際ヘッドフォンで聴いてみると、右側から左側へ、ピアノの高音、低音が配置され、ピアノの前に座っているように聞える。臨場感は、もちろんスピーカーによる5.0CHマルチチャンネルがピカいちだが、これも面白い方法だろう。
ちなみに、録音は7トラックでおこなわれ、5トラックがサラウンド・サウンド・トラック、2トラックがバイノーラル用トラックで録音されたそうである。

このSACDの収録は以下のとおり。
1 SACDマルチチャンネル
 ゴールドベルク変奏曲トラック1~32
2 SACDステレオ
 ゴールドベルク変奏曲トラック1~32
 ゴールドベルク変奏曲(バイノーラル録音)トラック33~64
3 CD層
 ゴールドベルク変奏曲トラック1~32
 ゴールドベルク変奏曲(バイノーラル録音)トラック33~64
1枚に5つの音源が入っています。

グールドの演奏データをもとにした、最新テクノロジーによる自動演奏

 グールドは既に他界しているので、この録音のために、もちろんグールド自身が演奏したのではない。とはいえ“グールドの演奏”であることも変わりはない。簡単にこのSACDの制作過程を書くとこうなる。

・グールドが残した55年録音の『ゴールドベルク変奏曲』をゼンフというソフトウェアで分析し、キータッチ、打鍵角度、ペダル…、などなどをデータ化。

・そのデータを、ヤマハ製(グールドが晩年使用したピアノメーカー)Disklavierグランドピアノで自動演奏する。精度は家庭用Disklavierの10倍。ピアノの調律も、生前のグールドのピアノを調律した人から指示をあおいだ。

・そのライヴ演奏をトロントのグレン・グールド・スタジオでDSDレコーディング。

 これほど、プレイボタンを押すのが楽しみなSACDもないだろう。さっそく聴いてみました。5.0chマルチチャンネルによるリスニングです。

どちらが、どっちだ、グールドの演奏

 最新のDSDレコーディングだから、当然と言えば当然なのだが、ピアノの素晴らしい音質に驚かされます。特にサラウンドの響きは絶大で、あたかもスタジオ内でグールドの演奏を聴いているように思える。
 55年録音はモノラルでヒスノイズも多かったものだから、このショックは大きい。これだけ録音、音質に差があると、肝心の「演奏のちがい」を、どこを物差しに比べたらいいのか正直、困るのですが…。
 それでも書くと、「聴いていて違和感はない」というのが正直なところです。コンピューターによる演奏ながら、機械的なところが全然感じられない(それともグールドが機械的?)。
「タネがわかっているのに、〈差を感じない〉というお前の耳はおかしいのではないか」と言われるかもしれないが、正直ホントなんです。
 当然ながら、グールドのうめき声や椅子のきしむ音はなく、それらがかもしだす“55年録音のムード”みたいなものはないけど、この「再創造」も音楽として何度も聴けてしまうから、驚きのクオリティだと思います(機械の演奏なのに)。音質がいいので、この「再創造」でグールドの細かいタッチや音を、「再体験」するのにいいかもしれませんね。
 最後にあらためて思うのは、オリジナル録音に残るグールドのうめき声。これって画家のようにグールドが自分の演奏に残した署名かもしれませんね。
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2007.3.21