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グレン・グールド
J.S.バッハ:フランス組曲(全曲)、フランス風序曲

B0090S4C2K
BACH:THE FRENCH SUITES & OVERTURE IN THE FRENCH STYLE
GLENN GOULD

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録音1971〜1973年
国内盤、ソニー・クラシカル
SACDハイブリッド2枚組
音匠レーベル・コート仕様

収録曲
ディスク1
・フランス組曲第1番
・フランス組曲第2番
・フランス組曲第3番
・フランス組曲第4番
ディスク2
・フランス組曲第5番
・フランス組曲第6番
・〈フランス風序曲〉

パッケージ
昔ながらの厚いプラケースにブックレット。

ジャケットアートワーク
1982年全集化され、再発売されたときのもの。

ブックレット
ブックレットには以下のライナー。
・レスリー・ガーバー「フランス組曲について」(第1番から第4番収録の米国初出盤のライナー翻訳)
・レスリー・ガーバー「フランス風序曲とフランス組曲について」(第5番から第6番、〈フランス風序曲〉収録の米国初出盤のライナー翻訳)
・ミヒャエル・シュテーゲマン「音楽作品のX線写真-グールドの〈フランス組曲〉と〈フランス風序曲〉」(1994年発売のライナー翻訳)
・アンドレアス・K・マイヤー「グールドをリマスターするということ」

音匠レーベル・コート仕様

音匠レーベル・コートのディスクタイトル。
音匠仕様のSACD
音匠について書かれたレビュー

ソニーの国内企画〈グールド生誕80年記念〉SACDハイブリッド


〈音匠〉とは、レーザーの赤色光線の補色となる特別な緑インクを使用して、読み取りを助け、より高音質にする技術。

 本作は2012年、ソニーから国内企画としてリリースされたグレン・グールドのSACDハイブリッド盤のひとつ。
 〈イギリス組曲〉のレビューでも書きましたが、アンドレス・K・マイヤーのリマスター。シリーズ共通のライナーによれば、グールドが初出LPで承認した(または関わった)2トラックのマスターを参照しながらのリミックス、マスタリングです。
 ディスクはソニーが開発した音質を向上させる〈音匠レーベル・コート〉。

ピアノの破損事件をはさんだ〈フランス組曲〉の録音

〈フランス組曲〉のオリジナルLPは、1973年9月に『第1番〜第4番』が発売され、翌74年4月に『第5番〜第6番、フランス風序曲』が発売されました。
 しかし録音は発売とは逆で、最初に発売された『第1番〜第4番』が72年〜73年。これにたいして、あと発売された『第5番〜第6番、フランス風序曲』のほうが録音は早く1971年です。

 この2つのアルバムの録音の間、1971年12月に、グールド愛用のピアノが輸送中に損傷するという事件がおきています。
 修理されたピアノは、グールドが好まない「レガート的な響き」を持ったようで、テンポを駆使したりしてグールドは苦慮していたようです。

オーディオ・ファイルには心地良い音『第1番〜第4番』(ディスク1)


『第1番〜第4番』の初版オリジナルジャケット。SACDではディスク1裏トレイに写真。録音はピアノ修理後の1972年〜73年。

 ピアノ修理後の初録音が〈フランス組曲〉の『第1番〜第4番』(ディスク1)です。
 破損前の録音『第5番〜第6番、フランス風序曲』(ディスク2)との、ピアノの響きの違いを、オーディオ・ファイルとしては楽しめるところでしょう。

 この修理後のピアノの音は、グールドにしては豊穣で、まるでペダルを踏んでいるような「みずみずしさ」があります。その中で「ト、ト、ト、ト」とノン・レガートを頑張るグールド。
 でもグールドには申し訳ないですが、オーディオ・ファイルとしては、SACDの柔らかい再生音には、こちらのピアノ音がたいへん心地良いのです。この音は録音技術の若干の進歩もやはりあるように思います。

硬質なグールドらしいピアノ音『第5番〜第6番、フランス風序曲』(ディスク2)


『第5番〜第6番、フランス風序曲』初版オリジナルジャケット。SACDではディスク2裏トレイに写真。録音はピアノ破損前の1971年。しかし第5番、〈フランス風序曲〉では一部1973年録音がまざっている。

 破損前に録音されていたディスク2の『第5番〜第6番、フランス風序曲』は、硬質な「あのグールド」のピアノ音です。
 もっとも曲の一部では、修理後1973年の録音も挿入されています(録音クレジットにあり)。第5番の1曲目「アルマンド」は、豊穣な響きだから、そうではないかと筆者は思います。

 これはLP発売時に、2枚のアルバムの統一感を考えたのではないかと思われますが、実際、普通に聴く分には、普通のリスナーには気づかない差です。
 以上は、スピーカーに聞き耳をたてたオーディオ・ファイルの感想と思ってください。

バッハの〈フランス組曲〉をざっくりと説明

 バッハの鍵盤楽器はいろいろあって、似てるように思えるわけですが、この〈フランス組曲〉の特徴をざっくり書くと、こうでしょう。

1 序曲のかわりに「アルマンド」という、チャーミングなアップ・テンポ曲でスタート
2 つづいて、さらにテンポアップした「クーラント」で盛り上げる(これがグールドは凄い)
3 スローな「サラバンド」で、ペース・ダウン。聴き手としては、やや退屈するも、よく聴くと味わえます。
4 ふたたび気分を変え、「メヌエット」とか「ガボット」のようなダンス風で明るい調子。
5 高速な「ジーク」で盛り上げて終わる。

 〈フランス風組曲〉は組曲全体もチャーミングですが、後半、第4番から第6番にいくにつれて、チャーミングなメロディがより多く出てきます。

〈フランス風序曲〉はグールドの独壇場

 最後の〈フランス風序曲〉は〈イタリア協奏曲〉と同じく、「鍵盤楽器だけで管弦楽のような響き」を出そうとバッハが狙った曲です。
 1曲目の「序曲」だけで、それが分かります。
 荘厳な前奏から、たたみかけるフーガへ、そして荘厳なテーマにもどる9分間、グールドの演奏は凄まじく、それまでの〈フランス組曲〉とは違う性質と分かります。
 バッハもすごいし、グールドもすごい。それが〈フランス風序曲〉です。

B0090S4C2K
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2013.5.26