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ヤーコプス指揮/フライブルク・バロック.o
モーツァルト;歌劇「皇帝ティートの慈悲」全曲


Mozart: La Clemenza di Tito

hermonia mundi、2枚組

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箱入り。ピクチャーレーベル。ディスク収納方法もちょっと可愛らしいやりかた。

ブックレットはとても綺麗な紙に印刷してある。といっても写真はほとんどなく文字ばかりなので、意味ないとも言えるが(笑)。でも気持いいブックレットではある。匂いもいい(笑)。

輸入盤ゆえ歌詞、解説に日本語訳はない。でも英語訳があるので、これでだいたいわかる。あとははインターネットで調べよう。

指揮者のヤーコプス自身による解説文が載っている(「皇帝ティートの慈悲』への7つの誤解~またはどうやってモーツァルトはヴィテーリアの命を救ったか?」)。これも英語訳でなんとなくわかる(またはなんとなくしかわからない)。

「モーツァルトはこのオペラを、短期間ででっち上げた」というのは誤解で、モーツァルトは実は大分前から、このオペラを部分的に作曲開始していた…、等々、誤解をといていきます。

再評価されるモーツァルト晩年のオペラ

 歌劇「皇帝ティートの慈悲」は長いこと、モーツァルトにしては二流のオペラとみなされていた。
同じ年(つまり晩年)、モーツァルトは歌劇『魔笛』や「レクイエム」を作曲しているのだから絶好調、駄作になることはないと思うのだが…

  1. モーツァルトは乗り気でなくいやいや作曲したらしい。
  2. 他の作曲で忙しく弟子のジェスマイヤーに手伝わせたらしい(レチタティーヴォ部分)。
  3. 皇帝を讚えるこのオペラの形式がすでに古くさくなっていたらしい。
  4. 歌劇を見たお妃が「ドイツの汚物」と吐き捨てたとか。

 などなどの理由で、「駄作だ」と言われていた。
それを知って、「モーツァルトも人の子かあ」とわたしも思ったものである。
ところが近年、このオペラの評価が上がってきた。「駄作」ではなく、モーツァルトの音楽のエッセンスがかなり入っている、と。
 おいおい、聴いてないよ~。それなら聴かなくては!
 ちょうどSACDで『皇帝ティートの慈悲』が出ましたので、さっそく聴いてみました。指揮は、『フィガロの結婚』全曲盤(SACD3枚組)で評価の高かったヤーコプスです。

まだの方は、ぜひこのSACDで〈ティート体験〉を

 序曲から、何の問題もなし。モーツァルトらしい素晴らしい序曲です。
「フィガロ」や「ドン・ジョバンニ」と違って、台本がまじめな内容だから、退屈と思いきや、モーツァルトの音楽は、同時期の「魔笛」と比べると、あっさりとして、キャッチーではないけれども、透明感では全然負けていないと思います。
二重唱や、クラリネットのオブリガードをともなうアリアは、モーツァルトの傑作と言ってもいいくらい。また『魔笛』の雰囲気も随所に感じる。わたしとしては『魔笛』なみに気に入りました。

 台本は評判悪いけど、わたしはぜんぜん悪くないと思う。皇帝暗殺事件とそれを許す皇帝、ワンパターンのヨイショ話だけど、登場人物の役割がスッキリしていて、脱力した自然体が逆にいい。
 なによりモーツァルトの音楽が登場人物の個性を引き立ててくれるところは、このオペラでも健在だ。
もちろん、まだモーツァルトのオペラを聴いたことがない人にはオススメしませんが(最初は「魔笛」や「フィガロの結婚」がいいよね)、モーツァルトのオペラを聴いてきた人で、もしこの「皇帝ティートの慈悲」を聴いていない方があったら、このSACDはオススメです。

古楽器の透明感と、溌剌とした歌唱があってこそ、と思う

 古楽器の透明感と溌剌さが、このオペラ再評価にぴったりだ。歌手陣もみな若いようだし、輝くような歌い方が、「古くさい」というイメージを払拭するのに役立っている気がします。セルヴィーリアを歌うイム(ソプラノ)もとても良い声だ。

 マルチチャンネルは、囲まれるというより、意識しない広がりがあり、前方の音が綺麗に鳴るようにしたもの。自然で聴きやすい。
 行進の入場や、反乱をくわだてたセストが岩場の陰から歌いだすところは、リア・スピーカーから音がでる演出をとっているが、すぐに前方に移動してくる。
映像なしでオペラを聴くのは単調なもの、それをうまくカバーしてくれるやり方だと思った。

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2005.6.5