一見、ショボイが、心くすぐるボーカル
ジャズ・シンガー&ギタリストのジョン・ビザレリが、フランク・シナトラの名曲を歌うSACDです。バックはクレイトン・ハミルトン・ジャズ・オーケストラ。
ピザレリという人は初めて聴きましたが、ボーカルは、かなり味があっていいですネ。
ピザレリのボーカルは、シナトラとはまったく対照的で歌い上げるタイプではない。
むしろ、ひ弱。甘い声で、ショボショボと歌う。
ちょうど映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の俳優、吉岡秀隆が歌っているような感じだ(笑)。
でも、慣れると、これが味わいになるのだから、ピザレリが人気、というのもわかる。人によっては、ちょっと癒し系なところもあるだろう。
僕も、ピザレリのほうが、シナトラがマッチョに歌うよりは、ずっと居心地がよく、「何度でも聴いてみよう」という気がおきますね。
ジャズ・オーケストラはスピード感ある柔らかい音
さて、そんなボーカルとはうらはらに、バックのジャズ・オーケストラは、迫力、ノリとも満点である。
めっちゃゴージャズに演奏してくれる。
DSDレコーディングのせいだろうか、音は、スピード感がありながら、同時にめっちゃ柔らかい。サックス・セクションの重なりや、ブラスの厚みが、聴いていてとても快感だ。
SACDサラウンドでは、前方に奥行き感をもって広がるオーケストラをバックに、ピザレリのボーカルがくっきりセンターに浮かぶ。薄めの残響がリスニングルームに広がるので、その場にいるような感じになる。
とにかく、ある意味「ナマじゃあ、こんな綺麗に聞えないだろう」というくらい綺麗な音。SACDの良さを裏切らない一枚でした。
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2006.10.21
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