Wilhelm Furtwängler et L'Eroica
MONO
録音1944年
輸入盤、Tahara
SACDハイブリッド
Amazon ¥ 1,675
普通のプラケースにブックレット。英語と仏語のライナー「Furtwängler conducts the Eroica in Vienna in 1944」「Analysis of the recording」
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戦時下の録音、“ウラニアのエロイカ”のSACD化
本作はフルトヴェングラーの中でも人気の、“ウラニアのエロイカ”と呼ばれる〈英雄〉のSACD化です。
録音は戦時下の、1944年12月19日と20日、ウィーン、ムジークフェラインザール。オーケストラはウィーン・フィル。ライヴではなく「放送用音源」として収録されました。
戦後、録音テープから、アメリカのウラニア(Urania)というレーベルが、巨匠の許可なくレコード化。まもなく発売禁止となりましたが、以後このレコードは、“ウラニアのエロイカ”と呼ばれ、ファン垂涎のものとなりました。
現在は、いろいろなレーベルからCD化されていますが、今回Taharaが、独Deutche Rundfunk Archivのオリジナル・テープのコピーから、初めてSACD化。24bit192kHzでリマスタリング。ピッチも修正してあります。
フルトヴェングラーの美学が分かる演奏
フルトヴェングラーの〈英雄〉は、今年はじめにSACD化された、EMIの52年録音も有名ですが、ファンのあいだでは、この“ウラニアのエロイカ”も評価が高いです。
聴いてみると、確かにすごいです。
フルトヴェングラーは、楽章という大枠だけでなく、細部にわたるフレージングや、テンポ、強弱を変化させ、音楽を創り上げていきます。
個人的には、第2楽章の葬送行進曲、絶頂でのホルンパートの旋律をチェック。
このあたりが気に入る〈英雄〉は、なかなかお目にかかれないのですが、これは白熱。52年録音よりも、こちらのほうがグッときました。 フルトヴェングラーの「美学」を知るには、バイロイトの「第九」よりも、この“ウラニアのエロイカ”のほうが分かりやすいのでは。
SACDの音
これはテープ録音(マグネットフォン)ですが、さすがに52年のEMI録音と比べると、音は劣ります。
まず、薄いヒスノイズがあります。
これは、余計なノイズを削除しなかったと好意的に考えましょう。実際、mp以上では、演奏の下に消えて気になりません。
52年のEMI録音は、モノラルでも広がりがありました。対して、こちらは音像が小さいモノラルです。
でもホールの残響音が綺麗に入っているし、音が伸びやかですので、窮屈感はありません。
弦楽器の質感も乏しいですが、反面、金管は強烈に鳴り響きますし(この演奏をやりすぎと、気にする人も)、ダイナミックレンジもありますので、演奏が始まると、いっさい気にならなくなります。
CD層
“ウラニアのエロイカ”は、他のCDおよびレコードを聴いたことがないので、今回はCD層も聴いてみました。
CD層は、SACD層のあとに聴いてしまうと、どうしても金属的な音に感じてしまいます。同じ音源なのに、音が硬いのが一目瞭然でした。
この“耳にあたる音”で、フルトヴェングラーの録音を聴くのは、どうも違和感を憶えてしまいます。
SACDでは、そんなことも憶えず、アナログぽい音。純粋に音楽を聴けたのでした。その意味で、SACD化の恩恵はあると思います。
Amazon ¥ 1,675
TaharaからのフルトヴェングラーSACD
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Symphony No. 9 (Hybr)
ベートーヴェンの第九。1954年フィルハーモニア管弦楽団との録音。シュワルツコップも参加。CDは1995年にGramophone賞を受賞しており、それを新たに24bit192kHzでマスタリングしSACD化。 |
2011.9.23
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