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ライスキ&ポーランド室内フィル
ベートーヴェン:交響曲第3番〈英雄〉、第4番


Ludwig van Beethoven
Symphonies No. 3 & 4

Polish Chamber Philharmonic Orchestra, Wojciech Rajski

Tower Records
Amazon


録音2009年、ポーランド
輸入盤、TACET

角の丸いプラケース。ブックレットにはTACETの録音に関するノート(SACDステレオとマルチチャンネル)。右下に載せたサラウンド図も掲載。

TACETのベートーヴェン交響曲、新しいサラウンドの試み

 TACETレーベルはドイツの高音質録音で有名なクラシック・レーベルです。本SACDはその「ベートーヴェン交響曲全集」の第4弾。交響曲第3番〈英雄〉と第4番です。
 演奏はポーランド室内フィル。室内フィルだけあって古楽オーケストラにちがい響きとアプローチです。大変キビキビしており、ちょうど評判のヤルヴィとドイツ・カンマーフィル・ブレーメンの演奏に近いですが、あれほどアクセントが強調されていません。人によってはこちらのほうがバランスよく「モダンオケで古楽風オケ」を堪能できると思います。TACETレーベルは演奏家も一流と聞きましたが確かにそのとおりでした。

SACDステレオは「真空管オンリー」で録音

 さて、高音質で有名なTACTレーベルですので、音質の話にうつります。
 SACDステレオ収録の「STEREOヴァージョン」は、真空管だけの機材で録音。使用マイクはノイマンM49真空管マイクを2本だけ。アンプはV72真空管アンプ、W85レギュレイターズにリンクされ使用されているとのこと。
 再生される音は、2本のマイクで録っただけあって、オーケストラが混然ととしたかたまりで、現実の音に近いようです。若干、木管が距離をもって聞こえるのもそういうことか。
 アンプのヴォリュームも、他のSACDの再生よりは、かなり上げてちょうどいい加減。コンプレッサーをかけてない高音質ジャズの再生と同じで、音が前に圧迫感をもって飛び出してきません。
 ただ、若干、オーケストラの音が、ホールトーンの中に埋もれているのが気になるところ。
 全体を2本のマイクだけでとらえるには、これくらい引きが必要だったのかもしれませんが、これでOKか、物足りないかは、個人のオーディオ装置とオーディオ感で分かれるところと思います。SACDラボ的には「気になってしまうところが随所にある」です。

マルチチャンネルは“クラシックに聴ける”360度サラウンド

 マルチチャンネルのサラウンドは、TACETこだわりのサウンドデザイン。ホール風サラウンドではなく、360度リスナーを囲むサラウンドです。それもストラヴィンスキーではなくベートーヴェンでこのサラウンドにするところが評価できます。
 オーケストラ楽器の配置は右図のとおり(ブックレットより転載)。第4番の配置が他のベートーヴェンの交響曲の録音でも基本のようですが、第3番〈英雄〉はホルンが3本のためリアに配置されています。
 クラシックの中でも、古典派を360度サラウンド、というと「お遊び」と予想する方も多いと思いますが、意外とまとまった印象です。
 綺麗な楽器音がクリアな空間に出現します。右図で見るほど、各楽器の分離は明確ではなく、普通のサラウンドでもおなじみの残響音があるので、うまくミックスされ一体化された感じです。
 特に内側の円周上の弦5部は、一見リア側のように見えますが、実際は頭の上のライン上かも。これもコントラバスの単体では後ろからに聞こえる。一方ヴァイオリンパートは、横か、やや前方向かもしれません。
 このように、それぞれのサラウンド環境、リアスピーカーの位置によって微妙にかわってきそうです。
 たとえば〈英雄〉の、猛々しいホルンの雄叫びも、リアからのはずですが、フロントにも残響音があるので、ポップスのサラウンドのように「はい、後ろから出た」と単純な響き方でもないわけです。

 このマルチチャンネルは、センタースピーカーを含む5本のスピーカーを使用します。リアスピーカーもできるだけフロントと差がないものが好ましいです。
 総合的にみて、このSACDはマルチチャンネルでおすすめです。演奏は文句なし。クラシック古典派の360度サラウンドが、ちゃんと“クラシックに”堪能できます。

Tower Records
Amazon

TACETのベートーヴェンSACD
Beethoven: Symphonies 1 & 2
Beethoven: Symphonies 5 & 6
Beethoven: Symphonies 7 & 8    
2010.6.26