パーヴォ・ヤルヴィ、フランクフルト放送交響楽団 ブルックナー:交響曲第3番[1889年第3稿(ノーヴァク版)] |
パーヴォ・ヤルヴィとフランクフルト放送交響楽団は、2006年から2013年にかけてブルックナーの交響曲を演奏会で演奏し、ライヴ録音されたものがSACDハイブリッドでリリースされていますが、本作はそれらの演奏会の終了後の2014年、再び第3番を取り上げての録音。ヤルヴィの第3番へのこだわりを感じます。
収録は2014年3月、フランクフルトのアルテ・オーパー。ライヴ録音をオリジナル・デジタルテープからDSDマスタリング。SACD層にはマルチチャンネルも収録しています。
演奏されているのは1889年の第3稿ノーヴァク版です。
交響曲第3番はブルックナーが敬愛するワーグナーに捧げた第1稿。ウィーンでブルックナー自身の指揮で演奏するために改訂された第2稿(これは失敗)。
さらに年月がたち、名声を得たブルックナーが再び改訂したのが第3稿で、本ディスクもこの第3稿による演奏が収録されています。
マルチチャンネルは、サラウンド感を出すような後方からの響きはほとんど意識されず、前方に広がる、体感的には2chのような音場です。
しかし前方から後方へのグラデーションを伴った自然な広がりは、スピーカーの存在を感じさせません。リアスピーカーが鳴っているマルチチャンネルならではの空間と思います。
フロントの奥行き感は確かで、ティンパニの強打は距離感を持って聞こえます。それでいてオーボエのソロなどは、きっちりと確かなものに再生されます。
弦楽は繊細でシルキーな柔らかい音。初期ステレオ録音の目の前に迫るような音もこたえられませんが、本作のような最新録音のオーケストラの音も、やはりSACDを聴くのなら味わいたいものです。
2019年8月21日