Brucker : Symphonie Nr.5
セルジュ・チェリビダッケ ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団
▶Tower Records
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SACD専用ディスク
シングルレイヤー(非圧縮)
国内盤 ALTUS
録音1986年10月22日 サントリーホール
録音 FM 東京
普通のプラケースにブックレット。
ライナーノーツには、チェリビダッケの子息セルジュ・イオアン・チェレビダーキ氏の「このエディションに寄せて」(2006年)。佐藤正治氏「故意の過失から生まれた録音」(2006年)、岡本稔氏「チェリビダッケ、ミュンヘン・フィルとの初来日で残した記念碑的名演」。あと演奏者と楽曲の解説。
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チェリビダッケの1986年来日ライヴのSACD化
本作はチェリビダッケとミュンヘン・フィルの来日ライヴのSACD化。非圧縮のシングルレイヤーでのリリースです。
これは1986年10月22日、オープンしたてのサントリー・ホールでのライヴ録音です。
チェリビダッケだからの、精神性と彫りの深い演奏
このライヴは、今でも語り継がれるだけあって、素晴らしい演奏でした。
テンポが以上に遅いことで有名なチェリビダッケですが、際立って遅いのは第2楽章くらいです。交響曲全体では90分強の演奏ですが、時間がたつのを忘れて、ずっと聴いていられたのは驚きでした。
なんといっても、チェリビダッケとミュンヘン・フィルの演奏と音が素晴らしい。
出だしのピッチカートによる序奏は神秘的な雰囲気。これだけで「なんて演奏なんだ」と思ってしまいました。
テンポが遅い分、音に含まれる精神性を強く感じます。加えて、表現の彫りの深さも尋常ではありません。
ミュンヘン・フィルとサントリーホールの響きをとらえた録音
全体を通して、ブルックナーは、オルガンのような「ヴァァー」という厚みのある音響が特徴ですが、これがすごく綺麗に響きます。
その音の放射は、綺麗というより「神々しい」と思うくらい。
ヴァント&ベルリン・フィルのSACDで第5番を聴いても、こんな「神がかり的な響き」は出てきません。
これはチェリビダッケとミュンヘン・フィルの演奏の素晴らしさですが、同時に、サントリーホールの響きをうまくとらえた録音の上手さも加わっていると思います。
2chながら、音像が大きい録音。膨張するオーケストラのトゥッティが、余裕をもってとらえられています。または膨張する音響にあわせて、ホール音も自在に伸びていくのか。
第4楽章フィナーレ。金管の強奏も「ヴァァァー」と鳴るのだけれど、響きは透明感にあふれています。
名演をとらえた僥倖の録音。それをSACDで再現
この「神々しい音楽の放射」の源を考えると、やはり第1にチェリビダッケとミュンヘン・フィルの唯一無二の演奏があげられます。
それと裏返しですが、ブルックナーの作曲した第6番の素晴らしさ。
第2には、この響きをとらえた録音の良さ(または僥倖)。
オーディオ的にはやや音が薄い気がするけど、そのかわりホールトーンに広がる透明感をとらえています。この音像でなかったら、チェリビダッケの演奏を再体験できなかったと思います。
そして第3に、以上をリスニングルームに再現する、SACDならではの音の広がり。
どれがかけても体験できなかったと思いました。SACDで聴けて本当によかった。
録音のうら話
最後にライナーノーツから録音の経緯について書いておきます。
録音嫌いのチェリビダッケに、この時の日本ツアーでただ1回のブルックナーを放送録音させてほしいと頼んだFM東京は、最初許可をもらいます。ところが開演5分前に、チェリビダッケから放送も録音もNOの指示がでました。
もし責任者がその指示にしたがったならば、今日、私たちはこのSACDを聴くことはできなかったわけですが、責任者は極秘に録音だけはおこなって、20年間、事務所の保管庫にテープを保管していました。
チェリビダッケの死後、生前の放送音源がCD化されていくわけですが、この録音もチェリビダッケのご子息の許可を得て2006年にCD化。そして2012年にSACD化されたのが本作です。
CDでは2枚組が、SACDでは1枚に90分以上収録され、高音質に加えて全曲を途切れなく聴くことができるようになりました。
▶Tower Records
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チェリビダッケのブルックナーSACD
2013.12.15
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