ギュンター・ヴァント
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ブルックナー交響曲選集1996-2001
SACD6枚+DVDビデオ1枚
(第5番はStereoのみ)
日本独自企画、初回限定生産
収録曲(録音年)
DISK1 交響曲第4番(1998年)
DISK2 交響曲第5番(1996年)
DISK3 交響曲第7番(1999年)
DISK4-5 交響曲第8番(2001年)
DISK6 交響曲第9番(1998年)
DISK7 DVDビデオ「ギュンター・ヴァント、音楽に捧げた人生」「ギュンター・ヴァント、ヴォルフガング・ザイフェルトとの対話」
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クラオタとしては夢のSACDボックス
「ブルックナーの交響曲は親しみにくいが、一度その良さを知ると、この上もない人生の喜びとなる」
これは世界中のクラシック愛好家からよく聞く言葉である。そういう意味でブルックナーはモーツァルトにも比較しうる作曲家だ。
さてこのSACDボックス。
ヴァント+ベルリン・フィル+SACD(わたしの場合さらに+マルチチャンネル)。これでブルックナーが聴けるなんて、まさに夢のようなSACDだ。
このSACDは、ライヴ録音を担当した当時のプロデューサーとエンジニアが、再びオリジナルマスターからミキシングしています(交響曲第5番以外はマルチチャンネルもミキシング)。
もちろんハイブリッド盤で、CD層もあらたにSBMリマスタリングがほどこされている。すごい念が入りようです。
付録のブックレットにはエンジニアやプロデューサーのインタビュー、SACD化にさいしての製作者の話、演奏記録のほか、ヴァントのインタビューも何本も載っています。いずれも小さい字で量は多い。
さらに各ディスクに収納されているブックレットには、その交響曲の解説がぎっしり、それもかなり専門的なアプローチで、音だけでなく資料としても圧倒されるボックスです。
これでDVDビデオもついて14700円なら文句ないでしょう。うん、ないない。日本独自企画の[初回限定生産]。現在はバラ売りです。
「プロフェッサーの耳に忠実に」
わたしがブルックナーで一番好きなのは第9番。なので、レビューは第9番だけで勘弁していただきたい。まあ、どれもいいから心配ないですよ。
さてマルチチャンネルで聴きました。
生前からヴァントの録音をプロデュースしてきたゲラルド・ゲッツェのノートを読むと、マルチチャンネルのミキシングは「前方にオーケストラ、全体にホールトーン」という標準的なクラシックのマルチチャンネルではなく、「後方にもオーケストラの音を入れた」と書いてあります。
「うっ、これではポップスのマルチみたいではないか、マズイなあ」
と、最初、思ったものですが、聴いてみると杞憂でした。
バランスはあくまで普通に聴くオーケストラのバランスなのでご心配なく。後ろからホルンが聞えてくる、なんてこともございません(笑)。
生前、ヴァントは指揮台の上で聴くオーケストラのバランスを好んでいたそうです。ですので、このマルチも「ヴァントの耳になったつもりで聴けるマルチ」を目指したとゲッツェは書いています。
わたしはベルリン・フィルの指揮台に立ったことがないので、わかりませんが(あたりまえか)、このSACDのマルチを聴いてみると、確かにベルリン・フィルが雲海のように眼前に広がる。そのため音の細部までがテクスチャーをもって聞えてくる。
まさに「プロフェッサー、ヴァントが望んでおられた指揮台の上でオーケストラの音響に全身が包まれているるような音」(ゲッツェ)が自分の部屋に出現する。今までのCDでは味わえなかったブルックナー体験であります。これに慣れてしまうと、他のブルックナーが聴けなくなってしまいそうだ。
2005.12.24
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