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ディヴィッド・ジンマン指揮&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団
マーラー:交響曲第3番 二短調


(マルチは4.0ch)
録音2006年2月
2枚組 BMG JAPAN

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一枚ものプラケースに2枚が入る収納。第1部がDISC1に、第2部がDISC2にキッチリ分けて入っているのもいい。

このシリーズ、毎回ジャケットの名画も楽しみですね。第3番はベックリーン《母なるヴィーナス》。毎回、世紀末的な絵画が選ばれているようです。

ジンマンのマーラー・サイクル第3弾

 デイヴィッド・ジンマンのマーラー・シリーズも第1番、第2番と続き、第3番がでた。今回の交響曲第3番はとりわけ印象深いSACDでした。

 マーラーの交響曲第3番は、冒頭の8本のホルンによるテーマ(「夏が行進してやってくる」マーラー)から「なんか、ねじれてる。でもカッコいい!」とお気に入りでした。よく聴いていたのはアバド/ウィーン・フィルのCDで、ウィーン・フィルのひしゃげたホルンの音色にシビレたものです。
 この交響曲は、高尚なものと俗なもの、天上的なものと不気味なもの、シリアスとユーモアなど、全部等価にぶち込んだ構成ですが、マーラーの筆が見事にまとめ上げていると思います。「まったくこの人は…」と呆れて尊敬してしまう曲ですね。

ホールのなかで鳴り響く“自然との交歓”

 さてジンマンの第3番は、他の指揮者の演奏(CD)にくらべると、少しあっさりした印象です。マーラーのCDを聴くといつも感じていた19世紀的なところ、コクや厚みが薄めでした。
 もちろんジンマンの端正な演奏がそう感じさせるのでしょうが、マルチチャンネルで再現されるホールトーンの見事な広がりのせいか、今まで聴いてきた3番より聴きやすい印象。
 オーケストラのフォルテッシモは混沌と交じり合うけど、透明にリスニングルームに広がるという感じ。
 第2部では、室内楽的な空間が見事に再現される。とくにポストホルンのソロは、今までのCDなら弱音で流れるだけだが、マルチチャンネルでは立体的に、彼方から聴こえる感じだ。第3番は生で聴いた事はないけど、マーラーの意図した響き(実演での響き)なのかもしれない。
 アルト独唱や合唱もとても綺麗で、最初にジンマンの演奏を「すこし薄味」と書きましたが、音の壁というより、3次元に響く空間だから、マーラーの交響曲としてはこれが普通の姿かも。

 マーラーが自然との交歓を投影したこの交響曲第3番は、100分近くある長い交響曲で、好きなんだけど、正直じっと聴くには苦痛な長さだった。
 しかしこのSACDマルチの響きは聴きやすく、いっきに第1部、第2部と聴き通せてしまった。気づいたら100分じっとしていたわけだ。「ホールの響きまで含んだ音楽が聴ける恩恵は大きいなあ」と実感しました。

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ジンマンのマーラー・シリーズ
Mahler: Symphony No. 1; Blumine
Mahler: Symphony No. 2
Mahler: Symphony No. 3
Mahler: Symphony No. 4
マーラー:交響曲第5番(国内盤)

2007.9.08