2021年4月6日 文・杉田ヨシオ
バーンスタイン&ロンドン響の「春の祭典」がQuadraphonic収録でSACD化
レナード・バーンスタインがロンドン交響楽団を振って録音した「春の祭典」が、Dutton VocalionよりSACDハイブリッド化。当時のQuadraphonic(SQ4チャンネル)もマルチチャンネルに収録している。オリジナルLPの発売時は、強烈なジャケットで印象に残っているクラシックファンも多いだろう。
ただ当時は、4チャンネル(Quadraphonic)は話題になったものの、広く普及することはなかったので、SQ4チャンネル盤を聴いた人は少ないかと思う。筆者もそうである。今回のQuadraphonic収録のSACD化を喜ばしく思う。
マルチチャンネルのQuadraphonicで聴いてみた
さっそく「春の祭典」をマルチチャンネルで聞いてみる。冒頭のファゴットのソロは前方からあらわれる。ホールトーンはわりと深い。残響音がリスニングルーム全体に広がるようだ。
怪しげな前奏が終わると「春の祭典」のトレードマークともいえる、弦楽器の強烈な刻みが始まる。これ以降からサラウンド感を感ずるようになる。
左サイドにホルン・セクション、右サイドにトランペット・セクションとわかる。ただホールトーンが深いので音の出どころが、ホルンなら左サイドのどの辺かわかりにくい。リア寄りの音もあれば、そうでない音もありそう。ホーン・セクションの中で奏者の位置が違うからなのだろうか。
右サイドのトランペット・セクションも同様。右サイトのフロントかリアか、それとも右全体からかわかりかねる。ホールトーンが深いから残響が全体に広がり指向性が薄れるのだろう。
実際にサラウンドを聴いている方ならご承知かと思うが、サラウンドの聴こえ方はリスナーによってさまざまである。リアスピーカーの位置、種類はもとより。同じリスナーでも頭の位置が10センチ変わっただけで音の聞こえ方が違ってしまうこともある。
これ以上書いても正確なところ伝えられないと思うので、興味のある方はご自身で聴いてもらいたい。全体的にはホールトーンが深めな中に、前方中心ながら360度配置のサラウンドではある。2チャンネルも収録されているのだから、2chステレオとQuadraphonicを気分で聴き分けてもいいだろう。ちなみに2chステレオはオリジナル・アナログ・マルチトラック・テープからMichel J. Duttonによる新ステレオミックスである。
プーランク「グローリア」、ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」の合唱
カップリングの曲にも触れておくと、プーランク「グローリア」は合唱団は後ろではないかと思う。独唱者はフロントの右であるか。これも残響は全体を包む感じ。
続くストラヴィンスキー「詩篇交響曲」の場合は合唱団がフロントとわかる。器楽はリアのような気がするが、これも残響が全体的に広がるし、個々の楽器で違ってくるのでなんとも言い切れないところがある。
サラウンドのことばかり書いてしまったが、アルバム自体は、SACDが1999年に登場した時にソニーミュージックのカタログに入っていてもおかしくないほどのタイトルだし、2枚分のアルバムが1枚のSACDに収録されているのだから文句はない。何より懐かしいあのジャケットの演奏がSACDで聴けるだけ嬉しいではないか(SACDのジャケットはオリジナルとは若干異なるが)。
- ストラヴィンスキー「春の祭典」
- プーランク「グローリア」
- ストラヴィンスキー「詩篇交響曲」