SACD
ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団
ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》

ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》 (1947年改訂版)(LP)

ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団

アナログレコード 33回転
発売:2021年5月19日
ステレオサウンド社独占販売品

ステレオサウンド・ストア

2021年5月27日 文・牧野良幸

ステレオサウンドが、ゲルギエフ『春の祭典』を世界初LP化

ステレオサウンド社(Stereo Sound)が、ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団の『ストラヴィンスキー:春の祭典』(1999年録音)をアナログレコード化した。オリジナルはCDで発売になっていただけなので、これが世界初のアナログ化である。

カッティングは日本コロムビアの武沢茂氏。プレスはソニー・ミュージックソリューション静岡工場。ただレコード盤は重量盤ではなく、140gのレギュラー盤を採用。これは今回の音源に合わせてスタッフが追い込んでいった結果、選択されたという。どこまでも音質重視で製作されたレコードだ。

「春の祭典」録音史でも指折りの話題盤

このゲルギエフの『春の祭典』は、発売時にかなり話題になった。当時はPhilipsから発売になったと思う。もちろんCDだ。

ここで「春の祭典」の録音史をたどると、ブーレーズ&クリーヴランド管弦楽団の1969年録音が、最もクラシック・ファンに衝撃を与えたと思う。僕もそれに依存はないが、僕の場合クラシックを聴き始めたのがそれ以降だから、知識として知るのみである。その点、ゲルギエフ盤は実際に体験した“ハルサイの話題盤”ということになった。

そもそも「春の祭典」は名演が多い。いろいろな指揮者の素晴らしい録音が目白押しである。珍しいところではストラヴィンスキー自身の自作自演盤もある。ブーレーズでさえDGへの再録音があるくらいだ。

そのどれも発売時は話題となったが、1969年のブーレーズ盤以降で、広く話題となり衝撃が大きかったのは、このゲルギエフ盤だったのではないか。実際この録音で初めてゲルギエフという指揮者を知った。いかにも“ロシア物をとことんやる”ような顔つきが印象的だった。

真空管式機材を使ってのデジタル録音

そんなCDでの名盤が初のアナログレコード化。今日アナログの再ブームと言われて久しいが、今までアナログ化されていなかったのが不思議なくらいだ。

付属のライナーを読んで初めて知ったのだが、この録音は、かつてPhilipsの録音エンジニア、この録音当時はフリーランスのエンジニアだったヤープ・デ・ヨングという人が真空管式機材を使ってデジタル録音したのだそうだ。

デジタル録音に真空管式機材というところが驚きだが、デ・ヨングさんの音質へのこだわりがそうさせたのだろう。なぜデジタル録音に真空管式機材が高音質をもたらすのか、ということについては、ライナーで新 忠篤氏が私論を書かれているので一読してほしい。

このレコードでは大きい音より、静かな音にひかれた

レコードに針を落としての最初の感想。まずは毎度のことながら「今のレコードはノイズ(パチパチ音)が出なくて綺麗な音だ」である。CDかと思うほど。冒頭のファゴットの小さい音色もクリアな空間に流れる。

しかしここでヴォリュームを上げると、後からの激しい部分では大音量になるから注意。それくらいダイナミックレンジが広い。強音のピークはティンパニや大太鼓の打音である。一打一打がズンとこたえる。

でも、このレコードで僕が気に入ったのは、大音量の部分ではなく静寂なところだ。これは僕の「春の祭典」の聴き方としては珍しい。

いつもはダイナミックなところで血湧き肉躍るのだが、このレコードに限っては、静寂な部分に惹かれた。最初に書いた第1部の序奏とか、B面の第2部の序奏などである。CDならともかく、アナログレコードによるS/Nのいい再生音だから惹かれるのかもしれない。もちろんダイナミックな部分も迫力があることは言うまでもない。

CD時代に話題となったゲルギエフの「春の祭典」。思い出すのはPhilipsの白抜きのロゴの入ったプラケースなわけだが、オーディオ・ファイルとしてはアナログで聴けるのが嬉しい。これからはアナログレコードによる「春の祭典」の決定盤として聴き続けていきたい。

ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》 (1947年改訂版)(LP)

ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー劇場管弦楽団

アナログレコード 33回転
発売:2021年5月19日
ステレオサウンド社独占販売品

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