復元された楽器、ヴァイオロンチェロ・ダ・スパッラ
この録音の目玉は、演奏楽器にチェロではなく、ヴァイオロンチェロ・ダ・スパッラ(以下スパッラ)という楽器を使ったことでしょう。
スパッラは、ベルトで肩にかけて弾く弦楽器です。いわば“肩かけチェロ”ということですね。
この復元されたスパッラで、チェロのための「無伴奏チェロ組曲」を弾いているわけですが、そもそも「無伴奏チェロ組曲」は、バッハの自筆楽譜がなく、実はどの楽器のために書かれた曲か決定的な答えはないんですよね。で、このスパッラのために書かれたのではないか、という説もあるらしい。
このSACDは、そのスパッラで演奏された「無伴奏チェロ組曲」の、世界初リリースであります。
ヴァイオロンチェロ・ダ・スパッラの、驚くべき音色
気になるスパッラの音色ですが、古楽器チェロと比べてボディは小さいのに、腰ひとつ低く、濃い低音に思いました。それでいて古楽器チェロより甘い音色でありました。かなり魅力的です。
さらに演奏もチェロで弾いた時より、すごく滑らかに流れている気がします。「無伴奏チェロ曲」をチェロで弾いた時の、独特のあのフレーズ間のヒッカカリみたいなものがない。スムーズに流れて行く感じです。
これはスパッラが5弦で、運指的にみても、自然な奏法で弾けるからでしょうか。「無伴奏チェロ組曲」の“舞曲風”なところに、さらに新たな光りがあてられた感じです。
百聞は一見にしかず。コロムビアミュージックのサイトで、寺神戸氏の演奏を動画で見ることができます。その演奏姿と音色は、けっこう衝撃的かと思いますよ。
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2008.8.8
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