topaboutblogclassicaljazzpopsjpopselect
S

アルトゥール・ピザーロ
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30番/第31番/第32番


Artur Pizarro
Beethoven: Late 3 Piano Sonatas

Hybrid Stereo/Multi-ch
録音2003年
輸入盤、LINN

Amazon

角の丸いプラケース。トータル62分少々。

ベートーヴェンの到達した無我の境地、後期三大ピアノ・ソナタ集

 本作はベートーヴェンの最後のピアノ・ソナタ3曲を収めたSACDです。収録曲は、第30番、第31番、第32番。
 晩年のベートーヴェンは、とても「運命」や「英雄」を作曲してきた人と、同じ作曲家とは思えませんね。弦楽四重奏曲もそうですが、ベートーヴェンが晩年に到達した世界は「無我の境地」であります。
 この3曲のピアノ・ソナタもそう。かつてのベートーヴェン独特の、「力強さ」や「押し付けがましいところ」が、ぜんぜんない。透明です。
 曲のフォルムも、かつては完璧な構成だったと思いますが、ここでは自然に「成るように作ったまで」という感じ。後期の弦楽四重奏曲と同じく、何度聴いても飽きない魅力、永遠に閉じない世界がこれらのソナタにはあります。

後期ピアノ・ソナタの世界を、残響のある響きで聴く

 マルチチャンネルで聴きましたが、録音場所の教会のせいか残響があります。でも、マルチチャンネルならこれで丁度いいくらい。けっして、うるさくはありません。むしろこれくらいが、実演の響きに近いのではないでしょうか。
 ピアノは、プリュートナーのフル・コンサート・グランド・ピアノだそうです。
 ピザーロはジャケットで見るかぎり、ごっつい顔で、曲の透明で、深遠な世界とマッチしない印象で心配でしたが、聴いてみると、繊細さも持ち合わせており、後期ピアノ・ソナタの演奏としては、不満なしでした。ジャケットではわからないものです。
 ピザーロは、ベートーヴェンのピアノ・ソナタをシリーズで録音していて、中期ピアノソナタもSACDでリリースしている。後期ピアノ・ソナタとして、残る第28番、第29番も出してもらいたいものである。

Amazon

2008.7.12