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ヤープ・ヴァン・ズウェーデン指揮オランダ放送フィル
ワーグナー:『パルジファル』(全曲)DVD付き

ディスク
RICHARD WAGNER
Parsifal

Jaap van Zweden
Netherlands Radio Philharmonic Orchestra


録音2010年12月
アムステルダム、コンセルトヘボウ
輸入盤 Challenge Classics
SACDハイブリッド4枚+DVD

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DVDには、コンセルトヘボウでの、同じ演奏のライヴ映像が収録されていて、これも観ごたえがある。
全曲からのハイライトで、トータル81分収録。
解説、ドキュメンタリー部分はいっさいなく、すべて演奏なのがいい。音声はステレオ。歌詞表示はドイツ語と英語がメニューで選べる。

ブックレットには、ドイツ語と英語による、解説、あらすじ、演奏者紹介。歌詞はドイツ語のみ。

ソリスト
アムフォルタス:フォルク・シュトルックマン
パルジファル :クラウス・フロリアン・フォークト
クンドリ:カタリナ・ダライマン

『パルジファル』こそ、サラウンドと思って

 ワーグナー自身が〈舞台神聖祝典劇〉と呼んでいた『パルジファル』は、死の1年前の作品。
 ワーグナーはこのオペラを、自ら作ったバイロイト祝祭歌劇場でしか上演する許可を与えなかったので、1914年まで、バイロイトのみで上演されていたのでした。
 『パルジファル』の音楽は、それまでのワーグナーの楽劇とちがって、透明で静謐な趣きがあります。

 ということで、ワーグナーがバイロイト祝祭歌劇場の音響にこだわったように、僕も「〈パルジファル〉だけは、サラウンドで聴きたい」と常々思っていました。
 このSACDは、名ホール、アムステルダム・コンセルトヘボウでの、コンサート形式のライヴ録音。サラウンドも収録しています。DVDにはコンサートのライヴ映像のハイライト(81分)が収録されています。

サラウンドは、綺麗なグラデーションのような広がり


函入りです。左、4枚のSACDとDVDは紙スリーブに収録。右がブックレット。全部同じ写真というのが芸がないですが。

 『パルジファル』が、我が家のリスニング・ルームに響きました。
 冒頭の霧のような「前奏曲」が始まった瞬間、「サラウンドで正解だった!」と実感しました。
 SACDマルチチャンネルで聴くと、スピーカーの存在は消え、どこか浮遊したような空間になります。
 前方のオーケストラと声楽は、綺麗なグラデーションの残響音に包まれます。これがコンセルトヘボウの響きかは分かりませんが、コンサートホールにいるような空間。
 オランダ放送フィルの音が、やわらかいです(ベルリン・フィル、ウィーン・フィルにこだわっていた自分に反省)。
 その上にソリストの声が、芯のある音で重なります。

 個人的にお気に入りのディスク2、合唱はSACDの白眉

 初めて聴いたChallenge ClassicsのSACDですが、音、サラウンドとも、凄くいいのに感心しました。
 特に素晴らしいのが、合唱です。
 『パルジファル』は、キリスト聖杯を主題にしているだけあって、合唱も神聖な趣きを出します。
 ときにオーケストラなし、裸で歌われる合唱も多く、合唱の再生音はとても綺麗です。男性合唱も女声合唱もウットリするくらい美しい。

 個人的におススメはディスク2。
 第1幕後半を収めた42分間は至福であります。
 グルネマンツ、パルジファルの独唱から始まり、合唱による「聖杯の覆いをとれ!(Enthüllet den Gral !)」「かつて聖杯の主は(Wein und Brot des letzten Mahles)」で終わるクライマックスまで、恍惚、恍惚であります。ディスク2の42分56分は、何度も聴けますねえ。

 もちろん、続く第2幕の最初もカッコいいし、第3幕の有名な「聖金曜日の音楽」も素晴らしい。
 『パルジファル』というと、ワーグナーの他のオペラと比べてストックなイメージですが、静謐な音とともに、血湧く音楽も含まれているのです。SACDの高音質、さらにサラウンド空間で聴ける喜びは大きかったです。

 ひとつ注意してもらいたいのは、ブックレットの歌詞はドイツ語の原語だけです。英語の対訳もありませんので、ご注意ください。
 DVDの内容は左コラムをご覧ください。

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2012.2.2