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ニコラウス・アーノンクール指揮/バイエルン放送交響楽団
シューマン:オラトリオ「楽園とペリ」(全曲)


Schumann: Das Paradies und die Peri
Hybrid Stereo/Multi-ch
録音2005年10月
SACD2枚組
国内盤と輸入盤、RCA RED SEAL

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輸入盤を購入。ブックレットには、ドイツ語と英語の作品解説。歌詞はドイツ語と英語対訳がつく。英語でなんとか意味を理解しようとするが、この作品の素晴らしさを考えると、値段は高くなっても日本語対訳のある国内盤を買っても損はないと思う。昔ながらの2枚組用プラケース(あの厚いもの)。

シューマンの、というよりクラシック声楽作品の傑作

 オラトリオ『楽園とペリ』は、〈あまり知られていない作品だが、シューマンの傑作〉という評判どおり、聴いてみて本当に「傑作だ!」と思いました。
 オラトリオといっても、ぜんぜん宗教臭くありません。物語は楽園を追放された妖精ペリが、再び楽園に戻るまでの話。
 楽園に戻るために、ペリは天の心にかなう捧げ物を探します。最初が「革命で命を落とした若者のしずく」。先にこのオラトリオを宗教臭くないと書きましたが、この第1部のハイライトは荘厳なフーガ。その構築力と迫力に、“叙情的作曲家シューマン”とは違った作曲家の一面を見ることでしょう。すばらしいフーガです。
 しかしそれでも門は開きません。続く第2部で「乙女の自己犠牲」を捧げるがこれもだめ。第3部(Disk2)で「悔い改める心」を捧げ物にして、ペリはようやく楽園に戻ることができるのです。
 物語の間じゅう、本当に美しい音楽が流れる。8人の独唱者と混声合唱団、そしてオーケストラによる音楽は、シューマンらしい抒情に満ちたものです。いや、他の声楽作品よりも“シューマン度”は高いと言えます。
 ドイツ語で歌われるオーケストラ付き声楽作品としては、ワーグナー、ブラームスの作品を押さえて、この『楽園とペリ』が一番親しみやすいのではないでしょうか。19世紀中期の声楽作品として、クラシックファンにはうれしい贈り物です。

クラシックファンにはストライクな音、そこにソリストのハッとする声

 そんな素晴らしい音楽を、マルチチャンネルの「格別の音場」で聴いていると、「SACDリスナーで良かった」とつくづく思いました。
 マルチチャンネルでは、前方に現れる音場に立体感が増しています。
 そこに現れるソリストの声にハッとする。これまた立体的にくっきりと現れるのですが、オーケストラとは見事に描き分けられた“音の輪郭”が、聴いていて快感です。
 そんなソリストを支える残響の美しいオーケストラの音、そして混ざり具合のちょうどいい合唱の響き。弦楽器、木管、金管、打楽器、声楽、合唱。すべての要素が奇麗な響きと厚み。クラシックファンにはストライクな音(ベートーヴェンから始まる19世紀ドイツ音楽の、あの極上のサウンド)だと思いました。
 このように音楽は希有な作品で、音質も素晴らしいSACD。最近はマーラーやブルックナーのSACDばかり何種類も増えて食傷ぎみでしたが、久しぶりに有意義なディスクがあらわれ、うれしくなりました。

アーノンクール、その他のSACD
Mozart: Requiem [Hybrid SACD] Handel: Messiah [Hybrid SACD]
SACDラボレビュー
2009.5.13