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サヴァール&ラ・カペッリャ・レイアル・デ・カタルーニャ
モンテヴェルディ:〈聖母マリアの夕べの祈り〉(1610)

ディスク
Monteverdi
Vespro della Beata Vergine


録音:1988年マントヴァ、サンタ・バルバラ・バジリカ聖堂
輸入盤、ALIA VOX
SACDハイブリッド2枚組

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4つ開きのデジパック仕様にSACDを2枚収録。
ALIA VOXのおなじみの紙質のいいブックレットは7ミリくらいの厚さ。しかし写真、図は所々にある程度で、ほとんどは各国語での解説と歌詞(日本語はなし)。

現代人にも訴えかけてくる音楽

 ルネサンスからバロックにかけての作曲家モンテヴェルディの代表作〈聖母マリアの夕べの祈り〉のSACDです。
 18世紀以降のクラシック、またはバッハまでしか聴いた事がない人が、初めてこの音楽を聴くと、物足りなさを憶えるかもしれません。
 〈聖母マリアの夕べの祈り〉はバロック以前の音楽ですので、ガッシリとした構築感がとぼしい「薄味な」クラシックではあります。またどこか博物館の展示を見ているような、空虚さを感じるかもしれません。
 しかしそれも最初だけです。じっくり聴いてみると、決して博物館の音楽ではなく、現役の音楽。現代人に語りかけてくれる音楽としては、バッハやベートーヴェン、もっと近づいて現代音楽とも同じだとわかります。
 声楽はゆったりと流れ、メロディが「おいしい」とわかります。器楽演奏は夜空の星がきらめくように、「瞬間の美しさ」を放ってきます。

 初演された聖堂での響きをマルチチャンネルで

 ジョルディ・サヴァールの指揮で聴くこのSACDは、そんな〈聖母マリアの夕べの祈り〉の特色をこの上なく感じる演奏です。
 録音は1988年。当時はアストレ(現ナイーフ)レーベルからCDリリースされ、以来〈聖母マリアの夕べの祈り〉の名盤の1枚となっていましたが、2007年にリマスタリング、SACDで発売となっています。
 この録音の特徴は、〈聖母マリアの夕べの祈り〉が初演されたサンタ・バルバラ・バジリカ聖堂での録音ということでしょう。なのでSACDには初演時の「1610」というタイトルも加えられいます。

 マルチチャンネルでは、残響がリスニングルームに違和感なく広がります。マルチチャンネルは、SACD化に際しての制作でしょうが、よくできていると思います。最新録音のマルチチャンネルと比べても遜色ありません。
 残響があるといっても、ヴォーカルや器楽音は埋もれておらず、厚みのあるものなので、聴きやすいです。
 メインのソロヴォーカル(10人か)は最前列に、実体のある厚みのある音で近めに並ぶ。器楽も同じニュアンス。コーラス隊はその奥に距離感を持って配置といった具合。
 遠くの声楽、人数がすくない声ほど、深く大きい響きを感じます。
 そんなマルチチャンネルを聴きながら、サンタ・バルバラ・バジリカ聖堂の初演に思いをはせてしまいます。

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2010.5.24