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SACDhybrid 日野皓正  寂光


Terumasa Hino
Hybrid Stereo/Multi-ch DSD Mixing
ソニーミュージック

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普通のプラケースにブックレット

ブックレットはカラーだが、自然のイメージ写真が少し。あとメンバーの小写真。

メンバー、録音のクレジット。ライナーはなし。

ゲストに佐藤允彦(p)、山田穣(as) 。作曲は日野皓正。菊池雅章の新曲も2曲。

日野クインテットによる演奏

 本作は、日野クインテットによる作品。発売は2008年11月。
 日野皓正の自叙伝 『逆光』で、本作を「60歳代での自分のジャズ」と述べているとおり、画期的なアルバムだと思います。日野自身だけでなく、ジャズ界にとっても、これは歴史に残したいアルバムに思いました。
 ジャケットから仏教ぼいイメージのサウンドを思い浮かべるかもしれませんが、音楽はクインテット編成のジャズです。

“音”と“間”、音宇宙を創造する日野のジャズ

 かなりフリーぽい演奏。しかし、各奏者の“間”、インプロビゼーションに対する意識が行き渡っていて、暴走するわけではなく、緊張感のある空間を生み出しています。
 この空間、ジャズ編成でありながら、ジャズを超えた音楽にも聴こえます。
 ピアノはまるでウェーベルンの最小主義のような演奏。日野と多田誠司(as)の奏でるテーマは、『ネフェルティティ』のマイルスとショーターのよう。
 もちろんトランペットとアルトのソロでは、昨今のジャズ・スタンダードではとうてい表出できないジャズ・プレイを聴かせてくれます(これぞ、「今のジャズ」という感じ)。
 若きドラマー、和丸の演奏はトラック5「AM PM」で十分に堪能(後半ソロあり)。
 本アルバムを先に「仏教ぽくない」と書きましたが、『寂光』の演奏は、(ちょうど武満がクラシックでやったように、東洋的な)「音宇宙」を感じさせてくれます。その意味でジャケットは音楽にふさわしいと思いました。

余白がたっぷり。SACDの音を堪能するのに、バッチリの音空間

 SACDは2chステレオを収録。
 バンドの音は、全体をワンポイントでとらえた「ナチュラル空間」録音というより、5人をミックス上で集めたバンド音と思います。
 しかし、この各音が「どうだー」と言わんばかりの、SACDの本領発揮のアコースティック音なので、聴いていて大変心地良いです。
 各音の厚み、柔らかさ、空気感は十分。それらがガツンと、ひとつになって、いいバンド音が再生されるのです。
 演奏がまた、“無音”を意識的に音楽の一部として取り入れているので、余白がたっぷり。SACDの音を堪能するには、バッチリの音空間となっています。

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2011.7.20