ニューヨークのホットなライヴハウスでのDSDレコーディング
本作は、Eity-Eight'sレーベルからのマリーナ・ショウに続く2作目のライヴ録音です。ニューヨークのライヴスポット「ジャズ・スタンダード」でのライブ録音を、STEREO/マルチチャンネルともにDSDレコーディング。高音質ファンには見逃せないSACDです。
このバンドのリーダー、ロニー・ブラキシコは1960年生まれ。ジャズ・メッセンジャーズにもいたことがある、アコースティックとエレクトリック両方を弾くベーシストです。もちろん、ジャケット写真はプラキシコがひとり写っています。
グループは、ホーン2管とドラムで熱い演奏
なので演奏は、ベースを大きくフューチャーしたジャズ、と予想してしまいそうですが、実際はちがいます。ベースソロは、ほとんどないのではないか。
これは、テナーサックスとトランペットの2管をフロントにした「ビ・バップの熱気にファンキーさを加えた」演奏です。パーカッション奏者もいるので、エネルギッシュ度はさらにアップ。
このバンドのファンキーさを演出しているのが、ドラムのライオネル・コーデューです。飛び跳ねるようなドラム・ワーク。いい意味で「バタバタと叩いてくれる」(←褒めてます)。熱い、熱い! ロックで言えばザ・フーのドラマー、キース・ムーンの暴れん坊ぶりを思い出しました。
こんなドラムに支えられて、 ホーンも張り切ってますから、ライヴ演奏を聴いている醍醐味は満点。ロニー・ブラキシコ・グループの演奏は、「フラッと店に入ったけど、このバンド、気に入ったよ、騒いでるなあ」って、スタジオでの作り物を聴く時とは別物の、本当にライヴハウスで聴いたような感想を持ってしまいます。
もちろん、「サマータイム」などのバラード系もバランスよく、数カ所演奏しています。この時は、ビ・バップもファンキーも姿を消す。古いジャズの4ビートにのり、ホーンがしっとりとバラードソロを歌い込みます。
マルチチャンネルは、ざくっと切り取られたような臨場感
マルチチャンネルで聴いてみました。高音質のEighty-Eight'sレーベル、DSDレコーディングだけあって、ざっくりと「ジャズ・スタンダード」の店内をもぎとってきたようなサラウンドです。
よくクラシックのマルチチャンネルでは、「残響音で空間を作り出すサラウンド」があります。クラシックですから、それも当然といえば当然ですが、どこか密閉感があるのもたしか。
しかしこのSACDのマルチチャンネルは、乾いた残響音。サラウンドは残響に頼らない「空気感だけで、スカーっと広がる」サラウンド。本当にライヴハウスに放り込まれたような臨場感です。
肝心の音も厚みがあり申し分なしでしょう。先に書いた乾いた残響音をともなって(デッドめということでもあります)、スピーカー位置からほぼ等身大の演奏音(そこから若干の奥行きもプラス)が出てきます。
観客の拍手、声援(たとえばヒューという声)、店内の雑音、などはリスナーの後ろから。これも等身大の音ですので、拍手も等身大。背中からの拍手ですと、すぐ後ろに人がいるようです(笑)。
前方に拍手はなしですので、リスナーの位置は観客席の一番前ということになり、すぐそこにバンドが演奏している、というサラウンドです。
こんな360度高音質サラウンドで、最初に説明した演奏が聴けるのですから、また書いてしまいますが「フラッと店に入ったけど、このバンド気に入ったよ」と、ライブを観ているような感想を持ってしまうSACDです。
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Eighty-Eight'sレーベルのライヴ録音SACD
2010.7.1
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