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吉田次郎
RED LINE

吉田次郎 / RED LINE

Tower RecordsAmazon
Sony Music Japan International(SMJI)/SACDハイブリッド/Stereo

修正なしのDSD一発録り

ニューヨーク在住のジャズ・ギタリスト、吉田次郎の新作『RED LINE』がSACDハイブリッドで発売になった。

吉田次郎はマリーン、クリヤ・マコトと組んだTHREESOME名義の『Cubic Magic』(2016年)と『Whatever!』(2017年)のSACDハイブリッドで、高音質ファンの注目を集めてきた。

4年ぶりのリーダー作である本作も高音質にこだわり、DSDレコーディングで製作されている。それも修正なし、オーバーダビングなしの一発録りだ。レコーディング・エンジニア、マスタリング・エンジニアはソニー・ミュージックコミュニケーションズの鈴木浩二氏。

修正なしのDSD録音、一発録り


録音は海外からミュージシャンが東京のソニー・ミュージックスタジオに集結しておこなわれた。1、2回のリハーサルをした後、1、2テイクで全曲をDSD録音したという。一発録りなので、その時かぎりのライヴな演奏が高音質で収録されている。

ミュージシャンの集中力たるや大変なものだったと思う。名前をあげると、アコースティック&エレクトリック・ギターに吉田次郎、ピアノにヴァーナー・ギリッグ、ベースにカール・カーター、ヴォーカルにマーロン・サンダースとマリーン、そしてドラムスに今や世界中に名前をとどろかせている若手ドラマー、川口千里である。1曲のみトロンボーンで本作のプロデューサーでもある杉田元一が参加。

SACDハイブリッドを聴いてみると、DSD録音らしくウォームな音。音のエッジが柔らかいから、ヴォリュームを上げても音がソリッドにならず豊かな空間が広がる。高解像度とアナログ感がうまくミックスした感じだ。こういう音を鳴らすとスピーカーも気持ちよさそうである。

ジャズからロック、アコースティックまで、ボーダーレスな音楽

演奏はどちらかと言えばロック調である。コルトレーンの「アフロ・ブルー」もビートを刻んだバンドサウンド。

ロック/ソウルも演奏している。エリック・クラプトンの「チェンジ・ザ・ワールド」、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」。チャカ・カーンの「ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・フォー・ミー」。これらの曲では吉田次郎のギターも遠慮なしのロック風である。

アコースティック・ギターのソロもある。フランシス・レイの「男と女」、ジョン・レノンの「イマジン」。SACDらしい艶やかで繊細な響きが聴ける。

個人的に気に入ったのは、吉田次郎が書いたジャズロック調の「レッド・ライン」で、変拍子をバンドが一体となってグイグイと進めていくところがスリリングだ。これが一発録りというのも信じられないが、だからこそ緊張感があふれるのかもしれない。

若さあふれる川口千里のドラム


左から吉田次郎(g)、カール・カーター(b)、ヴァーナー・ギリッグ(p)、マーロン・サンダース(vo)、マリーン(vo)、川口千里(ds)。

最後にドラムの川口千里にも注目したい。川口千里は2018年10月のレコーディング時はまだ女子大生だった。

その川口千里のプレイが若々しい。ちょうどジャズ・ピアニストの上原ひろみが登場した時のような初々しさだ。上原ひろみの“ドラムス版”と言ってもいいかもしれない。

とにかくセンターに陣取る彼女のドラムがどの曲でもハツラツとして耳を離さない。世界的に注目されているのも納得である。

笑われるかもしれないが、「レッド・ツェッペリンのドラマーもつとまるのではないか」、もしキース・エマーソンやグレッグ・レイクが生きていたら一緒に組んで「EL&Pのような演奏もできるのではないか」などと夢を見せてくれる。

何れにしてもジャズとかロックとか関係なく、聴く者の血を熱くさせてくれるドラマーだと思う。それが(なんども書いてしまうが)修正なしの一発録りのDSDで聴ける。高音質を楽しむなら、こんな熱い演奏で楽しみたい。

2019年7月10日

吉田次郎 / RED LINE

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Sony Music Japan International(SMJI)/SACDハイブリッド/Stereo

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