topaboutblogClajazzpopsJpopselect
LP
五輪真弓
恋人よ

五輪真弓「恋人よ」 (SACD/CD)

SACDハイブリッド/ステレオサウンド社独占販売品

ステレオサウンド・ストア

文・牧野良幸

五輪真弓の代表作『恋人よ』がステレオサウンドより初SACD化

このところ活発にSACD化をするステレオサウンド(Stereo Sound)が、五輪真弓の『恋人よ』を初SACD化した。2020年1月12日発売。

本作は五輪真弓の4度目のフランス録音。先行シングルの「恋人よ」 と「ジョーカー」の2曲は、当時東京の信濃町にあったソニーの録音スタジオでレコーディングされたものの、残る8曲はすべてフランスで収録されている。全10曲のミックス・ダウンはすべてフランス・パリのスタジオでおこなわれた。

SACD化に際して、ステレオサウンドのこだわりは強く、マスタリングは、1980年に発売された初回LPの制作時に使用されたオリジナル・アナログ・マスターテープを保管庫から取り寄せてマスタリングをした(A面用とB面用の2巻のテープ)。

マスタリング・エンジニアはソニー・ミュージックスタジオの鈴木浩二氏。アナログ・マスターテープの再生には調整の行き届いたスチューダーA820を使用し、イコライジングなどの補正を極力控えたフラットトランスファーに近いマスタリングを施しているとのこと。

監修をした三浦孝仁氏のライナーによれば「マスターテープからのフラットトランスファーに限りなく近い」「ダイナミクスの誇張やピークリミッターの介在を感じさせないアナログライクな音」とのこと。


SACDのライナーノートは三浦孝仁氏。それから八つ折りにされた歌詞カード。

今求めるのは“高音質で聴きたくなるほどいい音楽”。新譜の気分で聴けたSACD

五輪真弓というとデビュー作にしてアメリカ録音だった『少女』が忘れ難いが、この『恋人よ』も忘れ難い。

といってもアルバムの方ではなく、シングルの「恋人よ」がほとんどの方に印象深いのではないだろうか。シングルは1980年に大ヒットした。

このヒットにより一躍、国民的歌手となった五輪真弓であるが、『少女』で洋楽ファンにも鮮烈な印象を与えた音楽性が、歌謡曲寄りになった気がしないでもなかった。

しかしあれから40年の歳月は、この曲が歌謡曲だろうとニューミュージックだろうと関係なくしてしまった。

今リスナーが求めるのは「高音質で聴きたくなるほどいい音楽か?」ということに尽きる。その意味でアルバム『恋人よ』は今聴いてもいい。というか僕の場合は、当時LPで聴かなかったから、SACD化されたのを機会に新譜の気分で聴けて、こんないいディスクもなかった。

1曲目の「恋人よ」。やはり歌がうまい。いかにも「SACDで味わえるなあ」というトラックである。三浦氏のライナーを引用すれば「エンディング、終焉を告げるピアノの響きが空間に消え入るまでの音の描写は、これまでにはなかった生々しさ」とのこと。僕もバラードらしく少しずつ楽器が加わるたびに、「うむ、いい音」と膝を打って聴いた。

「恋人よ」以降の9曲も、五輪真弓の音楽と音質を好きになりながら聴く

「恋人よ」しか知らない人のために書くと、このアルバムは「恋人よ」以降は、シティポップ風になる。「あなたは突然に」「ジョーカー」など軽やかな曲が随所にあって飽きない。

この展開がまた楽しく、残りの9曲を新鮮に聴けるのだ。それでも最後の「愛の蜃気楼(砂の城)」は「恋人よ」に通じる陰りのある曲調なので、全体のまとまり感はある。

SACDの音質は各楽器とも粒立ち良く、押し出しも十分。オリジナルが完全なアナログ・レコーディングだけに、やはりSACD向きなのであろう。そして初回LPも聴いて方向性を決めたことなど、丁寧なマスタリング作業のたまものだろう。

毎日SACDを取り出しては、今日はどんな音質に出会えるか、楽しみに聴いている。五輪真弓の音楽と各曲の音質を1曲ずつ好きになりながら聴くのは、極上の楽しみ方ではないかと思う。

収録曲
1.恋人よ
2.あなたは突然に
3.ロマンプレイボーイ
4.ジョーカー
5.わたしの気持も知らないで
6.ジェラシー
7.想い出はいつの日も
8.思うままの女
9.春便り
10.愛の蜃気楼(砂の城)

2020年2月16日

五輪真弓「恋人よ」 (SACD/CD)

SACDハイブリッド/ステレオサウンド社独占販売品

ステレオサウンド・ストア

新着ニュース/記事