ザ・ビートルズ ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)スーパー・デラックス・エディション |
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)<スーパー・デラックス・エディション> 【6CD+Blu-ray Audio】
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『ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)』が50周年ということで、ジャイルズ・マーティンにより新ミックスがほどこされた。また5.1chサラウンドも製作されました。
この〈スーパー・デラックス・エディション)にはBlu-ray Audioが付いていて、96kHz/24bitによる“PCM Stereo”、“DTS Master Audio”、“Dollby-True HD 5.1”、さらにオリジナルLPの“モノミックス”を収録しています。
さっそくサラウンドの“DTS Master Audio”を聴いてみました。
上がトップ画面の右下に出るメニューのクローズ・アップです。
「バック・イン・ザ・USSR」、いきなりポールの声がセンタースピーカーに割り当てられていて、実在感を感じさせます。まるでヴォーカル・トラックを聴いているかのよう。全曲のヴォーカルがそうではありませんが、本作ではセンタースピーカーも積極的に使っています。あとサブ・ウーファーも重低音を鳴らす音ではありませんが、薄く入っているので必要となります。
ジャイルズ・マーティンのサラウンドは、オリジナルの雰囲気を壊さない丁寧なものに思えます。自然なつながりを最優先しつつ、サイドやリアに振り分けます。そしてここぞという時には、斜め後ろやリアに“差し色”のように音を入れたり、動かしてみるという感じでしょうか。どの曲でも細かな処理がしてあるようで、何回も聴きかえすと、いろいろな発見、細工が感じられるでしょう。
例えば「オブ・ラ・ディ・オブ・ラ・ダ」の最後の拍手は、そっと後ろへ移動していき、掛け声とともに、前方から「ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス」が始まるというよな、わかりやすい箇所もあります。
このように絶妙なサラウンドですが、オリジナルLPの4面にあたる「レボリューション1」から「グッド・ナイト」では、結構、派手なサラウンドが並びます。偶然そういう曲が並んでいるからでしょう。
その中でも究極はやはり「レボリューション9」で、これは遠慮なしの360度サラウンド。それも音の移動が細かく素早い。原曲の荒廃的ムードに合わせたサラウンドです。プログレでもここまで前衛的なサラウンドはなかったくらい究極のサラウンドを「レボリューション9」で体験できます。
そして最後の「グッド・ナイト」は包み込むように雄大な広がり。綺麗なサラウンドですねえ。今回のジャイルズの仕事は、かつての父親と同じく“5人目のビートルズ”と言ってもいい仕事に思えました。
2chの“PCM Stereo”も聴いてみました。上が再生中の画面。再生中、写真が色々動きます。
新ミックスのステレオは、オリジナルのステレオより厚みが増し現代風な音。何より音場が素晴らしい。たとえサラウンドがなく、この新ミックスだけでも満足してしまう出来です。
試しに、同じ高音質であるハイレゾ(FLAC 44.1kHz/24bit)の『ビートルズ USB』の「ホワイト・アルバム」と聴き比べてみましたが、『USB』の方は、ハイレゾとはいえエッジがキツイです。楽器のコントラストが強い。
これはオリジナルのステレオ・ミックスをそのままハイレゾ化しただけなので、当時のステレオ特有の分離感がそのまま残っているからでしょう。
その点、新ミックスのPCMは、やはりまずミックス自体を丁寧に作ってあるので、綺麗なステレオ感。自然な音場があり、それがハイレゾのPCMでさらに綺麗に仕上がっているとわかります。
“モノミックス”にも触れておきます。オリジナル・アナログ・レコードが発売された時代は、この“モノミックス”が正式な完成作品でした。これが「ホワイト・アルバム」の原点です。
“モノミックス”を聴く場合、まずはサラウンドやステレオに慣れた耳を元に戻す必要があります。でないと物足りなく感じてしまうことになります。3曲くらい聴き続けていくと、「やっぱりモノラルもいい」と思うはずです。音量はできるだけ上げる方がわかりやすいですが、ベース音などのコリコリ感も聞けるかと。
再生音はアナログのモノラル盤に比べると、音圧のパワーで、やはり一歩譲る気がするのですが、SACDラボはブルーレイ・レコーダーで再生しているので、これがOPPOあたりだと、もっとアナログに迫った音が聴けるかもしれません。何れにしても“モノミックス”もサラウンドやステレオに負けず楽しめました。サラウンドやステレオもいいですが、センターから放射状に広がる音は音楽として聴きやすい。「この中にサラウンドやステレオの妙味が含まれている」とさえ、後付けて思ってしまうほど、これはこれで豊かな音であります。
ちなみにBlu-ray Audioを聴くときは、AVアンプはビデオ系回路や音場の回路をオフにする“ピュア・モード”にしました。というのも5本のスピーカーのバランスを、ホームシアター用にリスニングルームに合わせて自動調節したいるせいか、“ピュア・モード”にしないとバランスが崩れるからです。特にモノラルは“ピュア・モード”にするとセンターにきっちり定位、音像も格段に締まります。
「イーシャー・デモ」はジョージ・ハリスンの家にメンバーが集まって録音したデモ。基本弾き語りで、パーカッションも時折加わっていますが、曲の完成度は高く、デモというよりもアルバム完成後にアコースティック・バージョンでもやってみるか、と作ったかのような錯覚さえ覚えます。ヴォーカルがダブルトラックになっているので(60年代風の)ステレオ感もあり、CDとはいえ音も良好です。
「セッションズ」は、さすがにバンドのアレンジでの苦労が感じられますが、何せ「ホワイトアルバム」の音源ですから、興味深いものばかりです。
ということで、けっして安いパッケージではありませんが、音源とブックレットの充実から、前作の『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』よりも満足度の高い内容でした。これで出るであろう『アビイ・ロード』『レット・イット・ビー』(?)も楽しみになりました。
2018年11月25日
ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)<スーパー・デラックス・エディション> 【6CD+Blu-ray Audio】
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