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サンタナ
ロータスの伝説 完全版-HYBRID 4.0-


サンタナ/ロータスの伝説 完全版 -HYBRID 4.0-
Tower Records
Amazon

Hybrid Stereo/Multi-ch
国内盤
SACDハイブリッド3枚組

オリジナル盤にはない追加曲(約35分)
「ジャパン」
「バンベレ」
「ウム・ウム・ウム」
「聖なる光」
「ザ・クリエイター・ハズ・ア・マスター・プラン」
「セイヴァー」
「コンガ・ソロ」

 サンタナの『ロータスの伝説 完全版 -HYBRID 4.0-』のSACDハイブリッドを聴きました。聴いたのは当時のSQ4チャンネルが収録されたSACDマルチチャンネルです。

 SACDラボが『ロータスの伝説』の4チャンネルを聴いていたのは高校生の時、74年末から76年初めまでの間です。
 その後今日まで、SQのLPを2チャンネルで聴いていましたが(あと06年のCDもあり)、今回はおよそ41年振りに4チャンネルと再会です。

観客の歓声がリアから出てライヴ感が出た

 1曲目の「瞑想」から、リアに気配は感じます。しかしまだ皆シーン。
 それが演奏が始まった「家路」で、観客の歓声と拍手がリア側から沸き上がります。

 現在のサラウンドのような滑らかに広がる空間ではなく、観客の拍手をリアから出すベタなサラウンドですが、当時の4チャンネルぽいです。

 でもリアスピーカーに耳をあてれば、拍手だけではなく、バンド演奏が会場の奥に反響した残響音も入っています。サラウンド空間もまずまずできていると思います。

 ともかく観客の拍手が後ろに回っただけで、『ロータスの伝説』のライヴ感は抜群になりました。
 サラウンドを強く感じるのは、きしくも今回追加収録された曲のほうです。
 これらの曲は初版でカットされるだけあって、演奏はリラックスしたものが多いのです。その分観客の声がよく聴こえるのです。
 たとえばディスク3の「コンガ・ソロ」。
 なんの変哲もないコンガのソロですが、リアからの観客の手拍子と一体となって「これぞサラウンド!」です。

加工臭の少ないダイナミックレンジの広い音

 次に音質面ですが、今回のSACDを初めて聴いた時、サンタナのギターが06年発売CDよりちょっと音圧が少ない気がしました。

 ライナーによれば、06年のCDはヌケをよくするためEQを使用し音圧も高めだったと。
 対して今回は過剰なコンプはおこなわず、EQも低域を補う程度、その分「加工臭の少ない」ダイナミックレンジの広い音となっております。その他、06年より最善の状態でSACD化がおこなわれたとか。

 確かにボリュームをぐっとあげられます。ボリュームをあげると、サンタナのギターはふたたびギュワーンとくるのでした。


SACD3枚組。SACDは15インチの黒ビニールにマウントされている。

未発表音源を加え、ショー全体があらわれた

 4ch、音質と書いて今回の『ロータスの伝説 完全版 -HYBRID 4.0-』が疑いもなく素晴らしいSACDであると実感したのですが、SACDラボが一番感激したのは、じつは4chよりも未発表音源の収録かもしれません。

 今回追加の音源は、ボーナストラック扱いのオマケではありません。未発表音源を加えたことで、両腕のなかった“ミロのビーナス”に腕がついたように、ショー全体の姿があらわれました。

 特にオリジナルLPの3枚目に収録された演奏は、名演ながらいかにもそこだけ取り出した感じがして、悪く言えばバラバラ。アルバム全体に対するバランスが悪かったのですが、未発表音源を数曲加えたことで、つながりが出ました。「LP3枚目はこんなことをやっていたのか!」と感激です。

 同じことはディスク1や2でも同じで、新たに加えられた音源が、いわば“余白”のような役割をにない、これまで収録されていた曲がより聴きやすく、スムーズにつながっていきます。

 ディスク2の「聖なる光」もそう。当時の最新作『ウェルカム』の曲を「実はライヴでやっていたのか!」と嬉しくなりました(歌手の音程が危なっかしいのもまた良しです)。

 これら未発表音源を加えて、スムーズに流れるサンタナのステージは、かつてLPで聴き込んでいた『ロータスの伝説』とは別のステージと言ってもいいくらいです。SACDを聴く環境のない人が、CD層で聴いても、これには感激ものでしょう。


分かりやすく緑の線で囲ったところが22面体ジャケット。緑の線の外側にあるのが、特典、当時のチケットやパンフレット復刻(『キャラバンサライ』の写真のもの)。

このSACDも新たな伝説に

 あまりに音が素晴らしかったので、いまだ味わい不足なのですがジャケットワークの再現も素晴らしいです。
 オリジナルLPを知らない人には、復刻された22面体ジャケットがうれしいでしょう。サイズが小さいとはいえ、06年のCD復刻とちがって、今回は15インチサイズです。

 SACDラボがニヤリとしたのは、来日時のパンフレット復刻です。本物はこれを馬鹿デカくしたものを売っていたわけです。
 あと音楽雑誌に掲載された当時のサンタナの写真なども見応えがあります。

 オリジナルのLP3枚組は、当時高校生を泣かせた6,300円。
 対してSACDはこれで¥8,000+税。

 SACD化だけでも嬉しいのに、よくここまでパッケージとして充実してくれたなあと思います。
 今回の完全版の意義は非常に大きいと言えます。このSACDは新たな伝説となることでしょう。

2017.4.23


サンタナ/ロータスの伝説 完全版 -HYBRID 4.0-
Tower Records
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