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冨田勲 作曲・指揮/東京交響楽団
源氏物語幻想交響絵巻・完全版

ディスク


国内盤、日本コロムビア
SACDハイブリッド2枚組

Tower Records

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1枚ものプラケースにSACDを2枚収録。

ブックレットには冨田勲氏による「源氏物語幻想交響絵巻 完全版によせて」、同じく冨田氏による各曲の解説風あらすじ。

ブックレット表紙、ページ中にホリ・ヒロシ氏の人形写真が何枚か。

千年の時空を超えた平安シンフォニー

 本作は1998年に冨田勲が作曲した「源氏物語幻想交響絵巻」の〈完全版〉で、録音は2008年12月〜2009年1月にかけて、冨田勲氏自身の指揮、東京交響楽団によって演奏されました。

 冨田勲のSACDは、『惑星(プラネッツ)Ultimate Edition』が何かと話題になりましたが、同時発売の本作も魅力的です。
 作曲から指揮、ミックスダウン、サラウンド化まで冨田氏自身によるため、音楽とサラウンドの一体感はバツグンなのです。SACDハイブリッド2枚組。トータル約1時間半。

 京ことばと360度サラウンドによる平安宇宙

 源氏物語は長大なストーリーなので、ハイライト部分の作曲がおこなわれています。
 源氏物語をモチーフにした作品というと、地味な印象をもつかもしれませんが、これが聴いていて面白いです。僕なんか『惑星』よりも「聴きたいSACD」となっています。

 曲には、語り部による京ことばの朗読がつきます。
 4つのスピーカーを平等にあつかい、360度が均等な空間が冨田氏のサラウンドですが、本作では声を前方に定着させたいと、センター・スピーカーに語り部をあてがって、5chのサラウンドとなっています。

 もちろん演奏は360度均等なサラウンド、というか半円球のような空間。
 オーケストラの演奏ですが、木管、金管、弦セクション、各パートは実際のオーケストラの位置とは関係なく、音楽にあわせて自由にその位置をとり、変貌していきます。
 シンセサイザーも目立ちませんが、加えられていると思います。

 それよりも「箏(そう)」「琵琶」「篠笛」「篳篥(ひちりき)」「笙(しょう)」といった、雅楽の楽器がふんだんに使われています。これらが平安の趣きを強烈に出します。
 武満徹の曲では、雅楽と西洋オーケストラの音色は、ぶつかり合い緊張感を生みましたが、この作品では、雅楽とオーケストラは、いとも簡単に溶け合っているのが驚きであります。

 サラウンドで、平安の物語に思いをはせる空間に

 本作は冨田氏自身も書いているように、ぜひサラウンドで聴いてもらいたい作品です。
 それからブックレットに載っている冨田氏自身による、各曲のあらすじを、先に読んでから聴くことをおすすめします。

 物語の内容がわかっていると、サラウンド音楽は、まるで平安の時代にいるような、そして光源氏の様子をまじかで観るような、聴き手のイマジネーションを刺激する空間になります。

 サラウンドのクライマックスは、ディスク1の最後「生霊」でしょうか。源氏の愛人、六条御息所(という女性)の恨みのシーン。
「ああ…くやしい…、ああ…、あさましい」とつぶやく内心の声。
 これが前方の語りとは別に、リアスピーカーからあらわれると、本当にゾッとしてしまうのです。

 そのほか、光源氏を愛する女たちの哀しい運命も、趣きが深く、何度聴いても飽きません。『源氏物語絵巻幻想交響絵巻』で平安の時代に、思いをはせてみたくなるのです。

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冨田勲のSACD
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2012.4.29