マイルス以来の胸躍る、HIROMIのセカンドアルバム
2003年、衝撃のデビューをした上原ひろみ。バークリー音楽院を首席で卒業した新人が、アメリカのメジャーレーベルTELARCからいきなりデビュー。ジャズ界での大事件でありました。彼女は欧米ではHIROMIとして知られているそうです。
さてこのSACD『ブレイン』は、2004年に発表。デビューアルバム『アナザー・マインド』に続くセカンドアルバムです。
聴いてみると、本当に「まれにみる逸材」だと思わずにはいられませんね。
ピアノ・プレイは個性のかたまり。
驚異的なスピードでひくパッセージは、ただ早いだけではなく、ちょっと大げさだが、それこそモーツァルトのフレーズの中にあるように「神が宿っている」ようです。
ゆったりしたプレイも、この若さでキース・ジャレット顔負け。信じられませんね。シンセサイザーの演奏も本当に自分流にこなしている。
全曲、上原ひろみのペンになる曲であるが、これも、みんな素晴らしい。
わたしはジャズに関しては、まあ、入り口付近のリスナーだと思うんですよね。それでも生意気言わせてもらうと、正直、マイルス亡きあとのジャズは博物館みたいなジャズばかりで、あまり聴かなかったのですが、これは、わたしにはマイルスの遺作『Doo-Bop』以来、久々に胸躍るアルバムでした。
わたしのなかで、マイルスの穴を、日本人が、それも20代の女の子が埋めてくれるとは! 今後も楽しみです。
この演奏をDSDレコーディングでしてくれて、ありがとう
SACD層は、2chとマルチチャンネル収録でDSDレコーディングである。
音はDSDレコーディング特有の「懐の深い自然な音」。スペックだけで磨き出した音とは対極の、パワフルなのだが落ち着いていて、暖かみのある何時間でも聴ける自然な音です。
ただでさえ素晴らしい演奏をDSDレコーディングでしてくれるなんて。「いやあ、ダブルでうれしいぜ」という感じです。
2chもいいが、マルチチャンネルもいい。
マルチでは部屋一杯をつかった演奏にかわります(マルチだからあたりまえか)。
シンセは自由に動き回る。ピアノも曲によってはフロントに限らず、全体に鳴るようになっていたり。
とはいってもチャラチャラしたマルチではないので御心配なく。
このマルチ、絵にたとえるなら、上原ひろみの自由奔放なプレイ、曲作りをうまく引き出す額ぶちと言えましょう。
2005.10.13
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