〈TBM〉復刻シリーズの1枚。鈴木勳トリオのSACD
本作は日本の名門ジャズレーベルだったスリー・ブラインド・マイス〈TBM〉のSACDハイブリッド盤での復刻シリーズの1枚。
リーダーの鈴木勳(ベース、チェロ)は70年代初めアート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズのメンバーとしても活動していましたが、〈TBM〉で『ブロウ・アップ』など、めざましいアルバムを作りました。この『黒いオルフェ』もその1枚です。山本剛(ピアノ、エレクトリック・ピアノ)、ドナルド・ベイリー(ドラムス)とのトリオ編成。
オンマイク録音は、スピーカーコーンもうれしそう
本作の主役はなんと言っても「音」でしょう。楽器にマイクを近づけたオンマイクの音。スピーカーからダイレクトに楽器の音が出てきます。
いつもは「ナチュラルな音場空間を含んだ音が好き」などと言う筆者ですが、このオンマイクが録ったガッツのある音にホレボレしてしまい、オーディオ心が「気持ちエエ〜」と言っているのがわかります。
なかでも一番くるのはリーダー鈴木勳のベースですね。「黒いオルフェ」の冒頭の弓弾き(アルコベース)の倍音をめちゃ含んだ音で、完全にノックアウト。鈴木のベースはピッチカートもあわせてアルバム全編で聴かせます。それからチェロも。
70年代のこういう録音でのジャズ。スピーカーのコーンがうれしそうに振動しているように思えます。
まるでポップアルバムのように聴ける心地よさは山本のプレイで
山本剛のエレクトリック・ピアノ(フェンダーローズ)とピアノもいい。この人のプレイは「ブルースぽさ」よりも、どこか「ポップさ」で輝いている気がします。
フェンダーローズの音色は70年代青春を過ごしてきた我々にはごちそう。チック・コリアを思わせるような軽快なアドリブプレイは聴いていて飽きません。
実際このアルバム全体を、ちょっと変な言い方ですが、「ジャズの窮屈さ」なしに楽しく聴かせる要因は山本剛のプレイであると思うのです。最初から最後まで、すーと聴けてしまうのです。
もちろん「エンジェル・アイズ」「イン・ア・センチメンタル・ムード」のバラードは、ブルースピアノであり、絵に描いたようなしっとり感がたまりません。
最後にドラムのドナルド・ベイリーのことも書いておきます。
右位置で奔放に鳴るドラムプレイは、オーディオ的には先のベースとピアノのオンマイクな「ガッツ&ハイファイ音」に隠れて注意がむきませんでしたが、最後の「ブルース」では、けっこう空間が出ている鳴り方だゾと思いました。思い返せば、ドラムも目の前で叩いているようないい音です。
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スリー・ブラインド・マイスのSACDレビュー
2009.11.26
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