革新的ベーシスト、ジャコ・パストリアス
最初に映画の話で恐縮だが、70年代にはびっくりする映画がたくさん登場したものだ。
「エマニエル夫人」では、こんな青年&女性用エロスもあるのかとビックリし(笑)、「燃えよドラゴン」では、カンフーとブルース・リーにビックリし、「スター・ウォーズ」では、こんなSFもあるのかとビックリした。
いずれもそれまで、まったくなかった映画だった。
一方音楽を見ると、70年代は「それまでまったくなかった」ものが登場したのは少ないと思う。大方それは60年代にあった。
そんな70年代音楽シーンで、わたしが印象に残っているもっとも「それまでなかったもの」といえば、やはりジャコ・パストリアスの登場でしょう。
彼は突然変異的に目の前に現れた感じがする。
たいがいの方と同じように、最初にジャコ・パストリアスのベースを聴いたときは、ぶったまげたものだ。
こんなベース、それまでなかった。
ジャコの弾くフレットレス・ベースの音は、それまで聞いたことがないようなフニョフニョである。言葉は悪いが、蛸のような軟体動物をわたしは想像してしまった。そしてあの超絶なテクニック! 大げさでなく革新的ベーシストでした。
ジャコのコンポーザーとしての作品集でもある
それまでウェザー・リポートに在籍していたジャコが、1976年に発表したのが、この『ジャコ・パストリアスの肖像』です。
曲は、ストリングス、スチール・ドラムなど、1曲1曲が独自のアレンジを施されて、魂を吹き込まれているのに気づきます。
このアルバムを聴くと、ジャコ・パストリアスにはベース・プレイだけにとどまらず、コンポーザーとしての高い視点を感じます。若き彼の作品集の意味でも、邦題の『ジャコ・パストリアスの肖像』はピッタリなタイトルだな、と思いました。
SACDは太くあたたかい音。各楽器がひらぺったく並ばないで、すこし空気感をもって分離するところが聴きどころ、かな。
ストリングは相変わらずメタリックな音だが、これはオリジナルからそうなのだろう。ジャコの好みだったのかもしれない。SACD専用ディスク。
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ウェザー・リポート関連のSACD
2005.11.28
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