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矢野顕子  ピヤノアキコ。~the best of solo piano songs~

Hybrid
国内盤、EPIC RECORDS
SACDハイブリッド盤(通常CDプレーヤーでも再生できます)

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普通のプラケースにブックレット。
折られたブックレットを開いていくと、ピアノの鍵盤写真となるアイデア。裏には全曲の歌詞。小貫信昭氏のライナー。

歌とピアノがからみあった、弾き語りベストアルバム

 本作は、矢野顕子の「弾き語り」のSACD。矢野顕子がピアノだけで録音したアルバム3枚から選んだベスト盤です。加えて新録音「ばらの花」「電話帳」、ボーナストラックとしてデビュー時の未発表ライヴ音源1曲を収録。
 「弾き語り」といっても矢野顕子の場合、通常のそれとは全然ちがいます。ピアノ伴奏が歌にからむように、独自の動きをする。
 実際、彼女のピアノ演奏は、現代音楽のピアノ曲のようでもあり、ジャズのインプロヴィゼーションのようでもあります。「いったいどういう構造になっているのだ?」と譜面で確認したいところ。ピアノだけでも聴きごたえがあります。

1曲1曲が、短編小説のような歌世界

 もちろん、メインの矢野顕子のヴォーカルは、「メロディ」に「語り」を配合したような独特の世界観で、つぶさに引き込まれます。先のピアノと歌がからみあって、1曲1曲が、短編小説のような歌世界。
 どの曲も、いわゆる「日本の日常生活」を描いたローカルな曲にすぎないのですが、それらはローカルを超えて、大げさに言うと、「人類の共通の世界」であるような深みを感じてしまいますね。ちょうど村上春樹の小説が世界中の読者に受け入れられているように。
 個人的に一番好きなのは「雷の鳴る前に」です。槇原敬之の作詞作曲ですが、完全に矢野顕子の曲になっています。
 これは他のカバーでも同様。オリジナルはもとより、カバーでも、彼女が歌えば、彼女の歌になってしまう。本当に「アーティスト」と呼べるミュージシャンだと思います。

SACDハイブリッドではヴォーカルの音質に期待 

 ベスト盤3枚から編んだアルバムなので、ピアノの音の録り方が曲によってちがいますが、気になるほどではありません。SACDでの音質の期待はヴォーカルのほうでしょう。
 とはいえ、プレイボタンを押したら、オーディオよりも矢野顕子の世界にどっぷり。「歌」「ピアノ」「SACD」の3つがからみ合った弾き語りアルバムだと思います。

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矢野顕子のSACD
矢野顕子/ホントのきもち
ほんわかムードだが、とんがった作品
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2010.5.12