録音1959年、ハリウッド
国内盤、ソニーミュージック
SACD専用ディスク
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ソニーから発売されたSACD初期の正方形のデジパック仕様。
ブックレットには、汎用的な曲と演奏者の解説。
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ブラームスの内省を、ワルターの円熟で聴く
ブルーノ・ワルターのSACD化された4枚のうちの1枚。ブラームスの交響曲第4番がSACD化されています。
ブラームスの4つの交響曲はどれも素晴らしく、甲乙付けがたいのですが、この第4番は老齢を重ねたブラームスの内省感に溢れた曲でしょう。ブラームスはどれもスルメのような交響曲ですが、第4番の「かめばかむほど味が出る度」は他の3つ以上だと思います。
そんな音楽ですから、晩年のワルターの暖かくいつくしむ演奏が、この交響曲にピッタリです。
第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の厳格でありながら、角のたたないたたずまい。第2楽章「アンダンテ・モデラート」のやさしさ、第3楽章の「アレグロ・ジョコーソ」の決してはしゃぎすぎない軽快さ。そして第4楽章、晩年のブラームスの到達点。「アレグロ・エネルジーコ」の変奏曲の、質素でありながら、ゆたかな深み。
どれもワルターの円熟した棒で、聴く者を捕らえて離しません。この演奏をレコード時代から聴き続けているクラシック・ファンも多いと思います。
SACDは豊かな中低音。そして空間を感じる再生音
この演奏をレコードやCDで聴いてきた方なら、このSACDの音の良さに気づかれると思います。
SACDでは、中音域や低音はかなり豊かになっていると思います。
個人的に気になるところは、フォルテで弾くヴァイオリンだけで、そこでは、さすがにSACDでも透明感がとぼしく「古い録音だからなあ」とか「コロンビア交響楽団だからかな」と思ってしまいますが、あとは「SACDでよかった!」と思うことばかり。
音質の改善はもちろんですが、僕がいちばん気に入っているのは空気感です。SACDの特徴である〈空気感〉が、この1959年の録音でも表出しているのに、ちょっと感動しました。
ペタッとしない再生音は、音のまわりに気配を感じます。なので演奏された空間の広さや奥行き感が、どこかただようのです(とくに静かな第2楽章や第4楽章)。この感触はワルターの4枚のSACDの中では、このSACDがいちばん顕著だと思います。
昔から聴いてきたワルターのレコードで、こういうたぐいの「オーディオ的快感」を得られたのは初めて。SACDでますます聴いていきたい演奏になりました。願わくばワルターのすべてのタイトルのSACD化を。
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ワルターのSACD
2010.5.14
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