交響曲第6番ではなく「田園」と呼ぶにふさわしいワルター盤
クラシック・マニアは、一生に何人の指揮者で〈田園〉を聴くのかなあ。
昔は〈田園〉の推薦盤といえば、いつも一番にあげられていたのが、このワルター指揮コロンビア交響楽団のレコードだ。第9ならフルトヴェングラー、「田園」ならワルター、といつも、いつも決まっていて、「もっと新しい録音でいいのもあるだろう!」と評論家に反発したこともあったが、スーパーオーディオCDでこのディスクを聴くと、「ああ、〈田園〉は、やっぱワルターでいいや」と思ってしまうのである。
第1楽章《田舎へ着いたときの愉しい感情のめざめ》の冒頭のメロディーを聴いたら、もうワルターの世界に引き込まれて、最後まで聴いてしまう。アナログだとそこまでじゃ、なかったけどなあ。スーパーオーディオCDだと、いつもその気はないのに、このディスクは最後まで聴いてしまうのだ。
第5楽章《牧人の歌》がわたしには、一番涙もので、ほんとに泣くわけじゃないけど、心の中では「アアア…」と喜びにひたっているのである。
ひっきょう、他の指揮者だと、ただの“交響曲第6番”だけど、ワルターで聴くと“田園”なんだなあ。この交響曲は第4楽章《雷雨、嵐》以外は、心の表題音楽ともいうべきもので、ワルターは、なんともうまくそれを紡ぎだしてくれているように思える。
ワルターの為に集められたコロンビア交響楽団は、「レコーディングの為の寄せ集め」だの、「いやいや、ワルターに心酔していた人が集まったから、演奏は情熱のあるものだ。有名なオケの人もいるよ」だのいろいろ言われるが、〈田園〉ではもちろん文句なし。
スーパーオーディオCDは、録音されたテープを聴いている感じ
1958年録音だから、今どきありえないオンマイクな音。それがいい。
スーパーオーディオCDでも、ヒスノイズはもちろん残っているが、アナログでここまでの音を出そうとすると、大変な苦労になると思われる。状態の良いオリジナル・レコードを探し、オルトフォンのカートリッジで鳴らせば、それは、いい音になると思うが、今どき、経済的にそこまでは無理だ。
確かに、いいカートリッジで聴くレコードの音は、独特で素晴らしいが、そもそもスーパーオーディオCDの場合、レコードというより、録音されたテープを聴いているような感じだから、アナログ・レコードの音と比べるのは、ちと違うような気がする。
コロンビア交響楽団の弦の数は少ないと思われ、ニューヨーク・フィルに比べるとがさついた感じはいなめないが、CDほど硬くならない点で、スーパーオーディオCDのほうが断然救われている。
このSACDは、ワルターを聴き続ける者にとっては、最上の音で聴け、幸せ。買ってよかったなあ、と思うディスクでした。これ中古で買ったんだよねえ。ほんといいもの買った。
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ワルターのSACD
2004.7.13
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