フルートアンサンブルのSACD
本作は女性フルート奏者4人組、RYNX(リンクス)のSACD『re(アールイー』です。2枚組。
DISK1は彼女達4人だけのアンサンブル。クラシックの名曲を、フルート4本にアレンジして演奏しています。
DISK2はバッキングが加わった演奏。曲もDISK1とうって変わってコンテンポラリーなものを集めてあります。
メインはもちろん、DISK1でしょう。DISK1はマルチチャンネルも収録。曲はラフマニノフの「パガニーニの主題による変奏曲」から始まる。
「4人の美女によるフルート演奏? ああイージーリスニングだな」と決めつけたくなるアナタ。
それは早合点です。RYNXの演奏は、というか「フルート4本による演奏は」とてつもなく面白く、エキサイトするのです。
そもそもフルートを「お嬢様の上品な楽器」と考えることが誤解のもと。フルートは、チューバにも引けを取らないほどパワフルな管楽器なんです。RYNXの4人が吹いているフルートは4種類で、ソプラノ、アルト、テナー、バスのそれぞれの音を出すフルートです。弦楽四重奏のフルート版というもの。
高域から低域までそろったアンサンブルは、演奏体として完結している。個人的にはバスフルート(という名称かな?)の音色がたまりません。
フルート4本が、まるで1つの楽器のように
曲はさらに、ボロディン「だったん人の踊り」、ハチャトリアン「剣の舞」、ムソルグスキー「展覧会の絵」からの数曲、と進む。
ここでフルート4本の面白さに完全に打ちのめされます。原曲を4つの音域にうまくアレンジした妙。フルート4本が、まるで何か、ひとつの楽器になったようです。シンセサイザー、またはパイプオルガンで原曲を演奏しているような爽快感に近い。
それでいながら、オリジナルで聴くのとまったく同じ咸興にひたれるのですから、たまげました。
決定的なのは、ベートーヴェンのピアノ曲「月光」第3楽章。このピアノ曲が4本のフルートで躍動感たっぷりに響く。アルバムはさらにヘンデル、バッハへと進んで終るのだが、最後まで「次はどんな風かな」と期待をさせてくれました。
またも、ちょっとちがうサラウンド。こだわりがちがう。
DISK1は、マルチチャンネルで聴きました。もちろんフロント、リアの各スピーカーにフルートを配置する、なんて幼稚なことはしません(そんなサラウンドはもう誰も制作しません)。
前方のフルート4本が、見事に広がる空間です。フルート4本の位置が普通のサラウンドより、かなり綿密に配置されていて、この音空間はオーディオ的にかなりご馳走です。
それもそのはず、このSACDはオノ・セイゲン氏、そして藤田恵美のSACD制作にもかかわった、かないまる氏のミックスなのです。音、サラウンドともに、コダワリまくられています。
DISK2は、SACDステレオのみです。その分、SACD特有の音質の良さを体験できます。生楽器のほかに打ち込み系の音も入っていますが、この音質にはびっくりでしょう。
2枚組みながら価格は国内盤1枚分の値段です。さらに2枚とも話題の〈音匠仕様〉コーティングです。
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2009.3.4
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